「いい子のあくび」高瀬隼子 感想•考察

人が気づかないことをやってしまう「いい子」の直子。
でもそれを割に合わないと感じ、歩きスマホをしている人にぶつかることで憂さ晴らしをしている

ある友人の前では善良に振る舞い、ある友人の前でもは過剰に攻撃的な愚痴を言う。
いい子と悪い子、どっちが本当の自分なのか戸惑っているのが印象的。

婚約者である大地は教師で表裏のない良い人と思っていた。しかし浮気をしていることを知る。
結局大地も悪いことをしていたのだ。

相手の望む内容を話し、時に悪口に加担することは誰にでもあると思う。常にありのままで、裏表のない人なんていないと思う。みんな良い面も悪い面もある。
だから主人公が自分の二面性に戸惑いながらも、大地を単純に捉えているのが不思議だった。自分だけ幼い頃からいい子を演じてきた、他の人はありのままでも許されてずるいと思っていたのかな。でも実際はお互い完璧に猫を被った似たもの同士なのが皮肉。

最後、悪口や愚痴で盛り上がる友人が連絡してきたのが救いがあった。
悪い直子でも、お酒がなくても、ただ心配してくれる。

私も自分と相手の良い面も悪い面も受け入れて、損得勘定なしでの付き合い、なかなか出来ないけどしていきたいなと思った。

高瀬さんはこれで4作目。
共通したメッセージとして「生きるのが大変じゃない人なんていない」「みんな色んな事情がある中で頑張って生きている」と言うのを感じる。
今の自分にとても沁みる。
このことはずっと忘れずに生きたい。

あと毎回出てくるモチーフ
姑に虐められるが助けない父と添い遂げる母、出身地の田舎に対する思い
実体験なのかもしれないが毎回出てきてもはや怨みのようなものを感じる


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