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年初の株高/テスラ急騰

2021年の世界の株式市場は、ほぼ全面高の状況で、米国やドイツを筆頭に史上最高値を更新しています。

日本も日経平均が約31年ぶりに28,000円台になっています。

こうした中で、テスラが昨年から通算で11営業日連続で上昇し、8日には時価総額で約86兆円になりましたが、8日までの11日間で増加した時価総額は約24兆円であり、これはトヨタの時価総額に匹敵する金額です。

また、サウジアラコムを除いて世界の時価総額トップ5はGAFAMの定位置(昨年アリババが2週間程度フェイスブックを上回った期間はありました)でしたが、7日にはフェイスブックを上回り、8日現在では5位テスラ約86兆円、6位フェイスブック約79兆円となっています。

テスラは2019年末と比較すると株式時価総額は約10倍になっています。しかもこの間に3回の増資を行い、合計1兆円以上の資金調達をしています。

増資をすると言うことは、発行済株式数が増え、既存株主の株の価値が下がることになるので、株主至上主義の考え方で言えば、否定的な見方をされる傾向が強い時代が続いていましたが、成長力がそれを上回ったということだと思います。特に電気自動車を作ると言うことは少なくとも現時点では環境面からも世の中のためになる、すなわちステークホルダー資本主義につながるという側面もあったと思います。

テスラの昨年の生産台数は約50万台、トヨタは1,000万台以上、売上高でもトヨタはテスラの約10倍強ですから、テスラは割高であるという見方もできます。

一方で、世界の自動車生産台数は年間約1億台、10年から15年程度でこの内約30%が電気自動車になると予測されており、先行者利益のあるテスラはこの時点ではシェア25%から30%程度と推定され、約1,000万台程度まで増えると考えられます。

50万台が10年から15年で20倍以上になると予測し、さらなる成長期待も加わって評価すれば、全く根拠がない株高ではないとも言えると思います。

しかし、テスラの評価がこれだけ急騰している本当の意味はどこにあるのかを冷静に考える必要があると思います。

それは
①非接触
②ESG
③ソフトウェア
④ARPU(ユーザー一人当たりの売上高)
であると言われています。

非接触は、テスラの販売方法は基本的に「ネット」であり、既存自動車会社のようにディーラーが店舗を構えて販売するスタイルではありません。コロナ禍ではこれは大きなメッリトであり、巣ごもり期間中でも売上を伸ばし続けました。

テスラはすでにリアル販売が当たり前であった業界に「ネット」を持ち込んで、成長への道を歩み始めています。ESGは電気自動車ですから現時点では当たり前のことです。そして最大の強みと思われ、成長期待を醸成するのがソフトウェアとARPUだと言われています。

テスラは車を「ソフト化」していて、生産段階でその時の最高性能のカメラやセンサーを取り入れ、搭載している「ソフトウェア」を繰り返しアップグレードして機能を広げていくと言う戦略を取っています。

すなわち、購入した時よりも、ソフトウェアを更新していくことで車をどんどん賢くしていく仕組みをすでに取り入れています。

そして、更新時には、新しい機能の代金として「課金」しています。ARPUで稼ごうとする戦略です。

この点が「自動車のアップル」と言われる所以であると言われています。

そのアップルも自動車産業に参入し「アップルカー」が実現する可能性が高くなってきていると報道されています。自動車の「ソフトウェイ化」、言い換えれば自動車の「無形固定資産化」が加速することになります。

アップルはソフトウェアの更新で料金を取りませんが、アップルミュージックなどで課金をして一人当たりの売上高を高める戦略を取っています。この点は、これまでも会長講義で何度か取り上げられていますから多くの人が理解していると思います。

実際、アップルの売上高比率をみても過去5年でアップルミュージックなどの「サービス」事業が倍増しています。

少なくとも株式市場的には、テスラはGAFAMと同じカテゴリーに入ると見られていると言うことだと思います。もはや自動車製造業ではなく、マスク氏もそのように見ているのではないかと思います。

すなわち、テスラの評価はいき過ぎている面があったとしても、既存の自動車産業と比べるのはナンセンスであり、さらに、電気自動車とか自動運転というこれからの時代に必要とされる技術の最先端を走っているというだけではないということであると考えます。

テスラが自動車業界に参入した際はもちろんですが、2年ぐらい前までは、「自動車と言う超精密機器を新興企業がまともに作れるはずがない」と既存自動車業界の人々は声をあげていました。

実際に、自動車生産という点ではテスラも試行錯誤を繰り返し失敗の連続だったことは明らかです。

しかし、テスラは「自動車業界に革命を起こす」ことを目指し、「ピポット」を繰り返しやっとここまできたのだと思います。今年の7月に設立18年を迎えます。

テスラは自動車という既存の物を、電気自動車に変貌させると同時に「ソフト化」をして、産業構造そのものを変えようとしてるようにも見えます。

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