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【札幌市内全駅下車】 平和駅(JR千歳線)

私がnoteで文章の投稿を始めてから、1年ほどが経ちました。
多くの方にご覧いただき、心から嬉しく思っています。
ありがとうございます。

これまではよくわからないエッセイのような文章が多かったのですが、本業とは程遠い内容で、イメージがしにくくなっていたかもしれません。
そこで、北海道に住む鉄道系ライターである私にしかできないことは何だろう…と考えてみることにしました。

これが、「札幌市内を旅して、市内にあるすべての駅に降り立ってみる」という今回の企画を始めようと考えたきっかけです。
「灯台下暗し」とはよく言ったもので、私は札幌のことを知っているようで知りません。
ならば、自分が住む札幌の街と鉄道について、より深く知っていきたいと考えるようになりました。

今回の企画は、私の修行の場にしたいとも考えています。
よく知らない街に降り立ち、初めてのものにたくさん触れる。
多少下調べはするけれど、事前に学べる情報に固執せず、訪れた際の感覚を大事にする。
今回の企画は、そういった訓練にもなると考えています。

ペースはこれまでと同じく、1ヶ月に1本ほど。
1駅ごとに訪問していると途方もない年月がかかってしまいますので、時には2駅、3駅とまとめて訪れることもあるかもしれません。
また、将来的にはこの企画で有料公開にも挑戦してみようと考えています。

半分自己満足のようなものですが、せっかくなのでご覧いただける皆さんと一緒に、札幌や鉄道について学んでいけたらと考えています。
暖かく見守っていただければ幸いです。

では、旅を始めましょう。


ずっと気になっていた駅への旅

松尾芭蕉は『おくのほそ道』で「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」と記し、モーツァルトは「旅をしない音楽家は不幸だ」と語った。
私は俳人でも音楽家でもないが、旅自体は嫌いではない。
鉄道を専門とする書き手である以上、旅は半分仕事のようなものである(ただし、仕事でどこかへ行くのはまったく楽しくないし、「経費で鉄道旅ができてラッキー」などとは死んでも思ってはいけない)。
「人生は旅」と表現する人も多いが、あながち間違っていないと思う。

しかし、旅とは長い道のりを移動することだけを指すものではない。
たとえば東京都内や横浜市内であっても、自分の居住圏から脱して見知らぬ土地を歩けば、それは立派な旅である。
公共交通機関が発達した現在ならすんなりと移動できてしまう距離であっても、江戸時代以前ならかなりのアドベンチャーだったはずだ。

神奈川県から札幌市に移住した私には、以前から気になっていた駅がある。
JR千歳線の平和駅だ。
まず、「平和」という駅名が気になる。
戦争で大きな被害を受けたのか、戦後に象徴的な名称として付けられたのか、はたまた別の理由があるのか。
そして並走する函館本線にはホームがなく、千歳線だけが停車するというのも興味深い。
快速「エアポート」の中から何度も見てはいるが、不思議と降りる機会がない駅でもあった。

ならば、一度降りてみようではないか。
そう思い、平和駅へ旅してみることにした。

それにしても、旅のきっかけを記そうとすると言い訳がましくなるのはなぜだろうか。

駅南側は札幌貨物ターミナル駅と隣接

札幌貨物ターミナル駅。架線柱の奥に見える白い跨線橋が平和駅

札幌駅9時37分発の普通北広島行きに乗り、平和駅に向かう。
北広島止まりの普通列車は2024年3月16日のダイヤ改正以降、北広島〜千歳間の普通列車が廃止されたことに伴って新設された。
快速「エアポート」も種別が増えて便利になったが、いまだに慣れない。
9時49分、列車は少し遅れて平和駅に着いた。

ホームは1面2線の島式。
駅に止まる列車は日中で1時間に2本ほどしかなく、快速「エアポート」や特急列車が轟音を立てて通過していく。
普通列車の本数も多い函館本線は当駅に停車せず、中心部に近い割に郊外風情が感じられる駅でもある。

改札口は新札幌寄りにあり、ホームと直結している。
2台ある自動改札はICカード専用で、きっぷで乗車した人は駅員に渡す仕組みだ。

改札前の階段を登ると、長大な歩道橋が現れる。
南北の自由通路となっており、歩行者はもちろん、自転車も押して歩けば通行できるようになっている。
どちらに行くか迷ったが、まずは南側へ向かうことにした。

南側は、駅名の由来となった「平和通」と呼ばれる地域である。
かつては本通の一部だったが、1961(昭和36)年から行われた土地区画整理事業で、函館本線と国道12号線の間に新たに道路が誕生した。
この際に新たな町名が検討され、地域住民の平和を願って「平和通」と名付けられたという。
連絡橋の前には広島・長崎の原爆被害を伝える「北海道ノーモアヒバクシャ会館」という施設があり、平和の尊さについて考えさせられる。

近隣は一戸建ての住宅が多く、人通りはまばらだ。
西へ進むと道央自動車道と国道274号線が走る高架橋があり、歩行者も登れる。
登った先からは、札幌貨物ターミナル駅がよく見えた。
貨物駅が近いためか、行き交う車はトラックが多い。

駅北側は南側以上に住宅が多い

南北連絡橋に戻り、今度は北側に向かってみる。
北側は南側と同じく住宅街だが、賃貸住宅が多いように感じられた。
駅前の通りでは北海道日本ハムファイターズの選手と、「平和駅に函館本線のホームを」と書かれた幟が風に舞っている。

平和駅に函館本線のホームがないことに、はっきりとした理由はない。
しかし、駅が設置された背景が関係していることは確かなようだ。
平和駅は1986(昭和61)年に、臨時乗降場として設置された。
地域の要望が通った形だったが、当初から多くの利用は想定されていなかったため、臨時乗降場という扱いとなったようだ。
国鉄民営化と同時に駅に昇格して現在に至るが、現状の輸送力で十分と判断されているのか、平和駅への函館本線ホーム設置に関する具体的な動きはない。

北側出口からは北13条北郷通が近く、北郷2条13丁目バス停には新札幌駅行きと南郷7丁目駅行き、地下鉄白石駅行きのバスが発着する。
ちょうどあと10分ほどで南郷7丁目駅行きが来ることがわかり、それに乗車することにした。
水源地通で左折してそのまま南郷7丁目駅に向かうと思いきや、国道12号線へ右折して少し回り道をする経路で、興味深かった。

初めての平和駅探訪が叶い嬉しかった。
今度はどの駅へ降り立とうか。

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