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2023年11月11日 イルカと過ごして5周年。

2023年11月9日。
IKI PARK MANAGEMENT を立ち上げて5年が経ちました。
この5年間、本当に色々なことがありました。

初めての移住、地方生活、観光施設の事業再生、イルカとの生活、社員とマネジメント。
たった5年でとんでもない経験をさせていただきました。
たくさんの方々に助けてもらい、壱岐に来てもらい、並々ならぬご指導ご鞭撻、ご声援をいただきました。
コロナで本当に首が回らなくなりそうになった時にはたくさんの方々にサポートをいただきました。
そこからいま現在もたくさんのサポーターさんが支えてくれています。
本当に、心から御礼申し上げますし、いくら感謝してもしきれません。
基本的に豆なタイプではないので、コミュニケーション量は少なめですが、
いただいたご恩は決して忘れておりません。今後、私自身がしっかりと立ち上がり、生きて、
イルカが笑って過ごせるようになることで、皆様へのご恩返しとさせていただければ、と思います。
本当にありがとうございます。

そんな記念すべき5周年の前日の昨日。
壱岐市議会議員が全員集まって、市長、副市長ご臨席の元、イルカパークの施設説明を行いました。
議会で度々取りあげられるイルカパークを実際に見てもらって、
会社とパークと飼育の現在地および課題を共有し、
何をどうすればよいのか、どうしたらより良い施設になるのか、
どうすればイルカは死なないのか、そんなことをざっくばらんにお話ししました。
今後もなるべくたくさんの目でどう改善すべきか、を考えていきたいからです。

そもそもイルカパークは壱岐市のものであって、僕のものではありません。
最後は「壱岐市」がどうするのか?というところが一番重要になります。
「イルカパークは壱岐市にとって必要なのか?」ってところです。
議会で問われるのは「予算が必要/適正か?」です。
正直、野生動物を飼育する、ってとてもじゃないけど簡単なことではありません。
相応のコストがかかります。環境にしたってこのままじゃダメなこともあります。
じゃぁ、そこまでこの施設にお金をかけていくのか?という大前提が今後、議論されると思います。

正直、僕も5年前に市の職員と市長から頼まれてこの事業を請け負った時、
壱岐市には観光客が25万人も来てて、さらに歴史博物館があって、
そこには10万人もの来場者があるのを知って、その半分でもイルカパークに来てくれれば再生完了!
超絶簡単な算数で考えていました。

当時はイルカの飼育がこれほどまでに難しいものだとは微塵も思っていませんでした。
だって、日本中に50以上の施設でイルカを飼育し、何十年も経営しているし、
イルカが死んだとかってニュースなんてほとんど聞かないし。。。
イルカの寿命は40-50年で、みんなそのくらい飼育していると思っていました。
しかし、現実は全く違いました。
野生動物で、しかも海洋生物であるイルカを飼育するなんて、本当に難しいものでした。

僕はこの施設に来て、この5年間で7頭のイルカを死なせています。
獣医が常駐していないイルカパークは、死亡直前の末期の治療に至っては、
緊急で獣医師にきてもらい壱岐で治療してもらいます。
そしてそれは薬剤も含めて数百万のコストがかかります。
それでも生きるか死ぬかは、「神のみぞ知る」領域なんです。
鯨類の医療に携わって20数年のキャリアの獣医師達が「こんなの初めて」と口々に言います。
所詮人間が飼育を始めて90年しか経っていない野生動物。
どんなキャリアがあっても、わからないことの方が圧倒的に多いんです。

結果、9月末にイルカパークではイルカが1頭になりました。
それを受けて、先の議会では「イルカパーク存続のためにイルカを購入する」という議論がなされました。
議員からはイルカが死んでいく本質的な理由(飼育要因 or 環境要因)がわからないのに、買うべきではない。
予算を凍結すべきだ、と言われます。一方で、イルカがいなければ、イルカパークは立ちゆきません。
他の施設ほどふれあいプログラムを提供している訳ではありませんが、
イルカがいなければ、相応の売上が落ちていきます。当然イルカにあわせて人員の削減はできません。
会社としてはコストは出るが、収入を得られる機会はない、という状況なのです。
僕のポリシーに則って、イルカを購入せずに、最後の一頭が亡くなるまで見守り、
このままイルカパークを閉める、という選択肢もありました。
ただ、壱岐市としては、1995年からあって、5年前に観光の基軸にする!と再生したこの施設。
そう簡単に「イルカ難しいから閉めよう!」とは当然なりませんし、
いま現在、イルカパークは壱岐市の観光においてはなくてはならない存在だと自負しています。
そこで市としても「壱岐市にはイルカパークは必要。故にイルカの購入も必須で急務である。
死亡原因は引き続き徹底的に検証していくし、第三者を入れた検討委員会を設立し、
イルカの生育環境改善は継続して行っていく。だからイルカを購入します。」ということになり、
結果、議会の承認も得て、新規のイルカを2頭購入と1頭貸与という形で、
合計3頭のイルカ達が壱岐にやってきました。

このロジックに関しては、当事者としてもそうなりますよね、という感じです。
ただ、イルカの捕獲販売に否定的な私個人はだいぶ複雑ではありました。
頭の中で二人の人格がずっと戦い続けます。指定管理者で経営者の僕と、海とイルカが大好きな僕。
この議論は、今もずっとずっと僕の中で続いているし、終わっていません。

とは言え、目の前にはイルカはもう来ています。
早く検討委員会でもなんでもいいので、本当に死ぬ原因を突き止めたいです。
調査するにもお金も時間もかかるので、そこは壱岐市と議会がしっかりとやってくれると信じています。
仮に、飼育している私たちに全ての原因があったとしたら、本当に申し訳ないし、すぐにでも代わります。
でもそれが海洋環境だった場合、「海洋環境改善」という途方もなくお金のかかる大規模な事業になります。
こうなった場合、壱岐市と議会はどうするのでしょうか?
「そんなにお金がかかるならイルカの飼育をやめましょう」となるのか。
それでもやっぱり「イルカは観光の要だからいくらかかってもやろう!」となるのでしょうか。
指定管理者がどうかとか小さい話ではなく、これもまた壱岐市において、大きな議題になることでしょう。
まぁ、どでかい公共工事が起こることを考えれば、島内の経済は回るのでしょうが・・・

イルカパークの再生が5周年を迎え、自分にとっても大きな節目だと思っています。
いま、海とイルカが大好きな僕は心から葛藤しています。
目の前のイルカは最高に可愛いし、絶対に守りたい存在です。来たからにはなんとしても幸せにしたい。
けど、けど、野生動物の飼育に関しては「人智を尽くして天命を待つ」しかないんです。。。
「人智」とか言っていますが、飼育90年の歴史で20数年のキャリアの専門家でさえもわからない世界。
たかだか5年の経験、しかも飼育員でもない僕ごときで何ができるのでしょうか。

僕は、イルカの飼育は5年ですが、40年近く海で遊んでいます。
海に潜り、魚と命懸けで勝負し、若さに任せて深さを競い、何度も死にかけて、
たくさんの人に潜りを教えて、海行きすぎて大学を留年し、熱が出れば海に入って、
お腹が空いたら海にいって、結局、親父が死ぬ時も僕は海に潜っていました。
僕は髪の毛の先から爪の先まで、海なんです。
海から全てを教えてもらいました。海のおかげで命を救われたこともたくさんあると思います。
海から学んだ全ては人間社会でどこまで活かされているかは分かりません。
が、この海で培ったヒト科ヒトという動物としての「感覚」だけには自信があります。
むしろもう一回、海棲哺乳類になろうとしている進化の過程にいるのではないか、と思うくらい(笑)

これまで、この「感覚」が飼育や治療の現場においていつも「違う」と教えてくれることがありました。
でも、そこには飼育員や獣医という専門家がいて「いや違う。こう言うもんだ」と言われました。
僕は専門家には100%敬意を払います。この5年間、ほぼ言う通りにしてきました。
けど、僕の感覚の違和感は、残念なほどに当たります。だから、僕はもうこれもやめようと思います。
獣医師の判断、飼育員の意見については、僕には持ち得ない、専門家の、人間社会の、
セカンドオピニオンとしてしっかりとご意見はいただきます。
しかし、最後の最後の判断は絶対に自分ですることにします。
これは全ての責任を持つ僕の明確な「覚悟」である、と思っています。
専門家からは治療が遅れて、助かるものも助からない、と言われるでしょう。
でも、それもこれまで救えないことの方が多かったので、そこはもうどちらにしても50−50と思っています。
であれば、全ての責任を負う自分が、自らの判断で、本当に意味で最後まで責任を負いたい、と思いました。

僕は、ただ、僕が海洋生物の中でもトップクラスに尊敬するイルカ達をできる限り守りたいです。
人間のエゴとか科学で大自然が創造した強く美しい生き物をコントロールしようなんて、烏滸がましいです。
海でそれなりに生きてきた僕が同じ動物としてできることは、ほんのちょっとしかないですけど、
飼育してしまった以上は、この壱岐のイルカ達が本当に幸せに生きられる場所にしたいです。

これからの壱岐イルカパーク&リゾートは、あずきと新しくきた3頭の合計4頭に加え、
2023年に新たにジョインしてくれた全く新しい人員で、完全に生まれ変わります。
「人とイルカがコミュニケーションを取るように、誰でもイルカと遊べる場」にしていきます。
これまでに死んでいった7頭の生命をしっかりと背負い、目の前のイルカ達と向き合い、
海と向き合い、精一杯自分のできることをやっていきたい、と思います。
もう絶対に絶対に絶対にイルカを死なせない。そんなことをここでしっかりと宣言します。

11/11は僕にとってはとっても大好きな日。(11が好きだから)
今日、この日に、みなさんへの御礼とこの「僕はがんばります!」宣言をしてみました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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