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息子へ(2)〜受験本番前日に〜

父は、君を誇りに思う。

大好きな野球に、中学生から思いきり打ち込むためにと、中学受験の道を選んだのは、君が小学校5年生の夏休みのことだったね。

父も、母も、きっと君も、そこまで深く考えての選択ではなかったと思う。

でも、小学校5年生の冬休みには、塾の冬季講習が始まり。
そのあとは、土曜日にも塾に行くことになって。
土日に活動する少年野球チームには、物理的に参加ができなくなったね。

大好きな野球ができないことは、君にとって大きなストレスになったと思う。
野球で上を目指すために選んだ中学受験の道。そのせいで、野球ができなくなる。ジレンマ。つらかったよね。

それでも君は、受験勉強に立ち向かった。

ゴールデンウィークも、毎日、塾。
父はね、このゴールデンウィークで君の心が折れるかもな、と実は思っていたんだ。
みんなが遊んだり、旅行に行ったり、野球をして過ごすゴールデンウィーク。
それなのに、君はひたすら勉強。
いやだろうなあと、父は思った。
ここで心が折れて、中学受験から撤退する。
そして、少年野球チームに戻る。
それでもいいと、父は思っていた。

でも、違った。

君は、ニコニコと笑顔を絶やさず、軽やかにこのゴールデンウィークを乗り切った。

このあたりから、本格的に「受験生」になったと感じているよ。

小さい頃から読み続けてきた漫画雑誌の購読をやめて。
もちろん、ゲームもしない。動画もテレビも見ない。

楽しみは、学校に行くこと。
それだけ。

小学生に、こんな過酷なことをさせていいのだろうか。
父は悩んだよ。
けど、すべてを勉強に捧げる君に、悩んだりするのは失礼だ、全力で応援するべきだ。そう思うことにしたんだ。

時には夜12時近くまで勉強をする君の疲労は、着実に溜まっていった。
塾から帰る電車の中で、座席に座った瞬間に寝落ちしてしまって、終点まで寝過ごしたことが何度もあったね。
疲れすぎて、勉強の途中で失神してしまったこともあった。

君は、極限まで頑張ったんだ。

2024年2月1日。
明日、いよいよ入試が始まる。

父はもう、何も言うことはない。
どんな結果になろうとも、父は君を心から誇りに思う。

さあ、行ってこい。



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