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物書きの年末

僕は自分のことを、つい最近まで47歳だと思っていました。
思い込んでいました。

ところが、先日、同い年の妻が誕生日を迎え、それに伴い自分が46歳であることが発覚しました。

歳を重ねると自分の年齢などどうでも良くなるとは聞きますが、ここまではっきりと間違えていた自分が怖いです。
これからさらに歳をとると、さらに自分の年齢がわからなくなっていき、仕舞いには年齢不詳の妖怪みたくなるのでしょうか。
まあ、それはそれでおもしろいかもしれません。
自分が妖怪になる…。悪く無い…(かも)。

さて、本日は、2023年12月30日。
いわゆる「今年も残すところあと二日」という状況です。

年末はどなたもお忙しいことと存じますが、いわゆるクリエイターと呼ばれる人種の年末におきましては、世間一般の皆さまのイメージとしては「地獄」ではないでしょうか。

ここに相違はありません。
紛れもなく地獄です。

自分の年齢を間違えていたことを知り、それを契機に、さて、僕はプロの物書きになって何年になるのだろうと振り返ってみました。

22歳でテレビの制作会社に入社し、アシスタントディレクターとして働き出します。
その3年後くらいに、放送作家に転身したので、そうですね、25歳から文章の道に入ったとカウントして良いでしょう。

途中、コピーライターにジョブチェンジをしていますが、「放送作家→コピーライター」は同じ物書きであるとして、現在、僕は46歳ですから…。

プロの物書き歴は、21年ほどになります。

20年以上も続けているので、もう「ベテラン」と呼ばれて良い領域に入っていると思います。
ところが、あれれ、どうしてなんでしょう。
この21年間、変わることなく、年末は地獄であり続けています。

どれほどの地獄が、ちょっと検証してみましょう。

朝はだいたい、7時くらいに起きます。
子どもが7時半前には学校へ行くので、それを見送りたいという親心が発動するんですね。
なので、子どもが朝食を食べている間には、意地でも起きます。

で、僕も朝食をとり、身支度を整え、自宅からチャリで5分ほどの事務所に8時前には出勤します。

出勤したら、まずはコーヒーを飲みながら新聞でも読みますか…読めません。
そのような時間は残念ながら皆無なのです。

すぐにパソコンを立ち上げると、山のようなメールが届きます。
僕のスケジュールを管理してくれているマネージャーのような人がいるのですが、その人が毎日更新してくれるGoogleカレンダーをチェックします。

ここで失神しそうになります。

え?
休憩時間どころか、食事の時間も無いじゃない。
移動時間がもったいないということで、会議や打ち合わせはすべてリモートに。ヒュー、有能。
隙間の無いスケジュール。
で、本日の終業時間は…。

ここで二度目の失神です。
終業時間は30時。すなわち、明朝6時ですって。

それは、睡眠時間1時間を意味します。

こんな日々が、12月に入るか入らないかくらいから始まります。
そして、12月30日を迎えた今日も、それは終わっていません。
仕事納めとは一体なんでしょうね。

僕がプロになった20年以上、毎年こうなのですから、そろそろ業界もこのおかしさに気づくべきです。
構造改革が必要だと思うのです。

…でもですね。

いまは、AIという脅威が目の前にあります。

以前、noteで「AIとクリエイターとは共存していくことになるでしょう」と書きましたが、その考えにはいまも変わりはありませんが、本当にAIが書いた文章・コピーだけで済ませるようになった企業も出てきている中では、そんな甘い考えだけでは通用しないかもという危機感も感じています。

そして、「やったろうじゃねえか。かかってこい、Chat●pi」という精神状態になるんですね。
特に、この地獄にあっては。

そりゃあ、AIは疲労しないでしょうよ。
眠らなくても平気でしょう。
ですが、人間が寝ずに休まずに食わずに頑張って書いた、魂のこもった文章は、AIには書けないはずなんです。

…書けるようにならないでね、AI。

一年の中で最も忙しい、この年末。
地獄の中から生まれた文章・コピーが、実は、振り返ると最もクオリティの高いものだったりします。

追い込まれた人間の強さなのかもしれません。

ああ。
だから、業界は何十年も、年末進行のあり方を変えないのか。

ヒュー、有能。

皆さま、今年も大変お世話になりました。
どうぞ良いお年をお迎えください。


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