見出し画像

”思いつき”定義集Ⅱ㉓「と」

【同質】異質を嫌うのがヒトの本性(驚異への反応)。言い換えれば同類へのシンパシーをもって安心を得る動物。虚勢を張る人も虎の威を借る人もいるが基本的に羊に近い(賛否あるだろうが羊のかわいさに免じて)。言語が異なる、見た目が異なる、生活様式が異なる――異質と同質の境界を感知・峻別するのがヒトの習性。
 ただ、究極の同質性がクローンであることを考えれば、異質との袖触れ合う仲も大切にしたい。取り分け群れを嫌悪する人には。
◆推し文献:クローンで思い出したのが、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(ハヤカワepi文庫、2008年)。クローンか否かはともかく人間である限り懊悩が尽きることはない。利用されるなんてまっぴら御免。

【道徳(2)】他者を攻撃する時に用いられる自己正当化の武器の一つ。学校では教科にもなっているらしい。だとすれば危険極まりない。自分をこそ正しいとする人間が集うとどうなるか――文科省はケンカを学ばせようとしているのか?
 芥川の寸評によれば「道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。道徳の与える損害は完全なる良心の麻痺である」。
◆推し文献:芥川龍之介『侏儒の言葉・西方の人』(新潮文庫、昭和43年)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?