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日本はもう先進国では無いという事実

日本はもはや先進国ではない。かなりショッキングだがデータが示す事実は認めざるを得ない。
コロナのワクチン接種関連のニュースで日本にワクチンが回ってこない状況を見ても世界をリードしていく役割を担っている国のそれとはとても言えない。しかもオリンピックの主催国で大勢のアスリートがやってくる予定の国である。
テレビのニュースだけを見ている人はなかなか分からないかもしれないが、テレビ以外のソースから情報を入れている人は知っていたかもしれない。
その事実を『安いニッポン』中藤玲著の読書レビューとして紹介します。

■物価の安い国日本
タイから来た20代の女性三人組にTDRを選んだ理由を聞くと「中国に行くより安いし、日本のキャストのクオリティーも高いし大満足」とのこと。実は日本のディズニーランドは世界で最も安いのだ!6年間で2000円値上げしたが、それでも世界で最も安い。
日本は長いデフレによって購買力が落ちている。簡単に言うと少しでも値上げをすると売れなくなる。なぜなら、20年間所得が上がっていないから!
20年間日本の物価はほとんど変わっておらず平均インフレ率は0%代。一方アメリカの物価は20年間ほぼ毎年2%ずつ上昇し、2020年の物価水準は00年の5割り増し。加えて給料は年間3%あがっている。
つまり、2000年に日本で1000円だったモノは2020年でも1000円。一方アメリカでは2000年に10ドルだったものは15ドルになっている計算だ。
コロナ以前はインバウンドの爆買いが問題になっていたが、爆買いされていたのは日本の物価が外国と比較した時に安かったからだ!

■人材の安い国日本
物やサービスの価格と賃金は密接に結びついるが日本の賃金はこの30年間全く成長していない。賃金がどんどん上がるアメリカなどと比べると日本は相対的にどんどん安くなっていっている。
日本が低賃金な理由として①労働生産性が停滞している②多様な賃金交渉のメカニズムがないの二点が挙げられる。
①労働生産性が停滞している
「労働生産性」とは労働によって成果がどれだけ効率的に生み出されたかを数値化したもの。付加価値額を労働者数で割って算出する。
統計が遡れる1970年以上ずっと主要7カ国で最下位。OECD加盟37カ国中21位となっており、もはや先進国のそれとはいえないだろう。
なぜヨーロッパは労働時間が日本より短いが経済が成り立っているのだろう。それは生産性が高いからだ。
生産性が高い理由の一つは価格。5倍の時間をかけて作っても、10倍の価格で売れば金額の生産性は2倍になる。逆に日本の生産性の低い理由の一つは価格付けの安さにある。
②多様な賃金交渉のメカニズムがない
日本の企業の給料は安い!
特に圧倒的に差があるのが、AIやIT人材の賃金。年収で言うと倍程度の差がある。
多くの企業は海外の優秀なIT人材を取り込みたいのだが給与が壁になっている。給与が安いので世界で戦うグローバル人材は獲得できない。
人材を育てると言う方向にシフトしたとしても、ある程度成長した後優秀な社員なら他の企業にヘッドハンティングされてしまう。提示された給料を聞けば苦笑いを浮かべながら「おめでとう」と言うしかない。
日本の企業では給料の交渉もできない、上司より貰うというのもあり得ない。優秀な人材を育てることも、取込むこともできないのだ。
豊かさを語る時、賃金は避けて通れない。企業が発展しても賃金が低いと個人が幸せになれない。個人が幸せにならないと企業は行き詰まる。

■外資マネーの流入
日本の土地が外資に買われる「ニセコ問題」というのがある。
極上のパウダースノーで有名だったニセコが外国人に買われプチ海外になっているのだ。物価は日本に比べかなり上がっておりラーメン2000円、カレー1500円。ニセコは日本の中の「安くないニッポン」だか、それでも世界的に見ると圧倒的に安いのだ。なぜ毎年ニセコに来るかと聞けば「滞在費が安いから毎年来られる」との回答をする外国人が多い。
ニセコのある倶知安町樺山地区の地下上昇率は2019年に66.7%で4年連続で住宅地のトップとなった。
近年では長野県白馬村、沖縄県宮古島市なども、「ニセコ化」してきたと言われている。

技術も同様に外資に買われている。
近年中国企業による日本の未上場企業へのM&A件数が増えている。技術があるのに日本の大手が興味を示さず、海外企業に安く買い叩かれる案件が増えているのだ。
中小企業にしてみれば、中国企業に買われたことで、グローバルな販路で息を吹き返した企業が多くある。
給与が世界より低いことで、買い負けだけではなく「人材の流出」が起こる。
アニメといえば日本のお家芸だが、日本に拠点を作って日本人アニメーターを抱え込もうとする中国企業が増えている。背景にあるのは日本人アニメーターの給与が安すぎると言うことがある。
中国企業は豊富な資金力でデジタル作画の設備が揃い、アニメの質が格段に向上している。日本の待遇の悪さは質の低下、業界の停滞につながりかねない。
「安さ」がもたらす日本のコンテンツの停滞を防ぐには、生産性を高めるために、「業界基準」と看過してきた劣悪な労働環境の見直しも欠かせない。

■コロナ後の世界
インバウンド観光客の爆買いは、相対的に物価が落ちている日本製品の安さのせい。まさに、購買力は移り変わり、この20年何も変わらず停滞し続けた日本は没落してしまった。活路を見出しつつあったインバウンドの過度な依存は国際情勢に左右されるリスクがあり、コロナでインバウンド需要が見込めなくなり完全に終わった。
日本の物価、賃金の安さは大きな問題となるのは
①個人の問題ー国内はなんとかなるかもしれないが、国外へ旅行に行くのは普通の人にはもう無理になるかもしれない
②人材の流出の懸念・・・日本の給料では能力のある人を引き止めておくのは無理。
③人材が育たなくなる・・・海外大学の授業料が払えない。英語ができず能力の低い人は外国人に安い給料で雇われるしかなくなる。
④将来国際的に活躍できる人材はどんどん少数になっていく
ということだ。

20年前から賃金、物価が止まったままの日本。先進国は置き去りにし、発展途上国は背後に迫り、並んで、引き離しにかかっている。
このテーマについてこの本しか読んでいないのでちょっと間に受けるわけにはいかない節もあるが、数字が示す通り事実には違いない。
日本は止まっているので、追い抜かれるのは時間の問題だ。国には何も期待できない以上、個人としていかに世界へ出ていくかということが重要になっていくかと思う。

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