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どこまでも行ける、私が望めば

ここ数年、旅に出ることが増えた。

旅といっても、国内で日帰り〜2泊3日のような近場のものばかりだが。それでも私にとっては大きな変化だ。

今までの私はというと、出不精インドア派の代表選手のようなもので。普段の休みは仕事で疲れた身体と精神を休ませるためのものなのに、なぜみんなわざわざ遠出してエネルギーを消耗するのかが本当にわからなかった。長期休みは長期休みで、混雑する公共交通機関に乗って人でごった返す観光地にわざわざ出向く意味を見出せなかった。最後に誰かと旅行に行ったのは一体いつだっただろうか……。

ちなみに、世の人間に「内向型」と「外向型」という二つのタイプがいることを知ったのは比較的最近のことだ。外に出ることでエネルギーを得る人種がいるということに、今でも驚きを隠せない。


そんなウルトラ内向型人間の私が出不精を脱却したのは、間違いなく夫のおかげだ。初めてのデートで「淡路島に行きましょう」と、軽く片道2時間のドライブをしたのが約2年前。まるで「映画でも見に行きましょう」とでもいうかのようなフットワークの軽さだった。彼は車で出かけることが好きで、数時間の運転くらいは苦にもならないらしい。Googleマップのルート案内で所要時間「45分」と出るだけで尻込みしていた私にとって、彼はまるで異星人のようだった。

それからというものの、2人で色んなところに出かけた。京都の渡月橋、奈良の二月堂、伊勢神宮とおかげ横丁、滋賀のメタセコイア並木。名古屋コーチンの親子丼を食べるためだけに日帰りで名古屋に出かけたこともある。まとまった休みが取れた時には、岡山や広島、山口まで足を伸ばしたりもした。


車があればどこにでも行ける。そんな当たり前のことがやっと腑に落ちて、気づけば私も車の運転が好きになっていた。高速道路は怖すぎて教習以来使ったことがなかったが、夫の指導のもと、1時間くらいなら走れるようになった。(今でも合流の時はめちゃくちゃ怖い)

夫と出会わなければ、車に乗ることを好きにならなければ、知ることのなかった世界。アクセルさえ踏めば、どこまでだって行ける全能感。


海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ(2)』



若者のクルマ離れは進む一方だというが、一歩進めばこんな世界もあるんだよと教えてあげたい気もする。自分で進める世界は、案外楽しい。


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