見出し画像

鑑賞レビュー:東京都博物館 特別展「京都・南山城の仏像」平安時代の極楽浄土をイメージしてみる

夏日が続く変な11月。すこし落ち着いた晴天の日に上野の東京国立博物館にいってまいりました。

東京国立博物館ではこの11月(2023年)には2つの特別展「南山城の仏像」と「やまと絵」が開催されており、どちらも捨てがたいので2つの展覧会を同時に見てまいりました。

そもそも「南山城ってどこ?」くらいな気持ちで見に行ったのですが、南山城(みなみやましろ)は京都の最南で奈良の境目にある地域。
歴史上では聖武天皇が恭仁京(くにきょう)を整備した場所でした。私が恭仁京のことを知ったのはつい最近のことだったのですが、高校で日本史を勉強した方は奈良時代に2年だけ都のことを覚えている人もおられるのではないでしょうか?
今回は、この南山城地域の11の寺社から18体の仏像が展示されていました。

奈良時代末期、疫病やら天災やらで貴族も庶民も疲弊し、天皇は「気分一新で都でもリニューアルするか?」という気持ちで遷都を繰り返すって時代だったということ。そんな時代に遷都の準備が進められた木津川周辺の南山城。
さらに仏教が正しく伝わらないから乱世になってるという末法思想からか仏教信仰の制度化が進んだ結果信仰が拡大し、理不尽な現世よりも死後の世界に期待するという思想が広がり絢爛豪華なバーチャル浄土空間がつくられることが流行ったのでしょうか?
繊細な彫刻に豪華な彩色や截金紋様、また金箔が張られたり玉がはめ込まれた像も多く、当時の技術の粋を極めた仏像がたくさん作られたようです。

展示は9世紀(奈良時代末期)~13世紀(平安末期)に作られた仏像がほぼ時系列に配置されており、年代ごとに様式が少しづつ変化していく推移も見られ平安から鎌倉へ、時代の価値観が変化していった様相もうかがい知ることができました。

私事としては、15歳の時に学校の遠足で「飛鳥・斑鳩(いかるが)」に行ったのをきっかけに法隆寺に親しみ、止利様式のすらりとした身体に神秘的で優美な笑みをたたえる救世観音をみて仏像に興味を持ちました。
その後も様々な仏像を見に行ったのですがその違いは「なんとなくそうおもう」の印象以外には記憶に残らず残念に思っていましたが、最近大学の授業で学ぶことが多く、仔細に見るようになりました。

同じ仏様であっても作者や発願者のちがいや時代の流行により様相はかわり、ご尊顔も瞑想的、荘厳、柔和、厳格、さまざまな表情を持たれた像があるという事を知ることができました。

私が今回気になったのは12世紀につくられたという浄瑠璃寺の地蔵菩薩立像。子供の守護仏「おじぞうさん」で親しまれる剃髪の仏さまですが、浄瑠璃寺の地蔵菩薩のお姿は滑らかに削られた木肌、切れ長のまなざしに小さな口の上品なお顔立ち、豊かなドレープのある衣の外側には花の截金紋様がちりばめられた優美で瞑想的な像でした。金箔の貼られた光背にも繊細な彫刻が施されています。仏様にも平安貴族の雅な好みが反映されているのでしょうか。エレガントです( ´艸`)

また、対照的ともいえる鎌倉時代の一点、行快(快派)作の阿弥陀如来像のストイックで厳しいお姿も印象的でした。伏し目がちでありながらこちらを見据える強いまなざしにかすかに笑みをたたえる口元。厳しさとやさしさが入り混じる表情に”頼りがい”を感じてしまいました。

展示数が18点という少数精鋭なのもじっくり見るのにはありがたい。

希少な展覧会でした~。

「やまと絵」については、また別の機会に。

今回も写真の撮影はできないので図像は掲載できませんが、出展したお寺の名前を記載します。同じ名前のお寺はたくさんあるので、地域を指定して検索してみてくださいね。尋ねた方のブログからとか、重要文化財ネットとかで見られるものがあります。

1,阿弥陀寺(あみだじ) 京都府城陽市
2,海住山寺(かいじゅうせんじ)京都府木津川市
3,岩船寺(がんせんじ)京都府木津川市
4,現光寺(げんこうじ)京都府木津川市
5,極楽寺(ごくらくじ)京都府城陽市
6,寿宝寺(じゅほうじ)京都府京田辺市
7,浄瑠璃寺(じょうるりじ)京都府木津川市
8,神童寺(じんどうじ)京都府木津川市
9,禅定寺(ぜんじょうじ)京都府綴喜郡宇田原町
10、松尾神社(まつおじんじゃ)京都府木津川市
11、薬師寺(やくしじ)京都府相楽郡和束町

仏像を鑑賞する際に、実際に目の前にその姿を見られますと図像では感じ取られない神聖性や神秘性をまとわれていると感じることがあります。
私たちがいま”制作物”として見ているものは人々の祈りや崇拝の対象であったという事も忘れてはならない点だと思いました。

初めて行ってみたトーハク秋のお庭の画像をUPしておきます。

裏庭では期間限定で茶寮やってます。いちどはゆっくり歩いてみたい。


大銀杏が見事ですが、まだなんとなく緑色。
裏庭では期間限定で茶寮がオープン中。





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?