見出し画像

Column #34 47歳

10/16で47歳になった。上のイラストby オグロエリ。いつも個人的に送ってくれる。愛を感じるよ、ありがとう😭。

なぜかもみあげにだけ白髪が増えてきた。白髪でもアグレッシブでかっこいいミュージシャンはまわりにいっぱいいるので、勇気が湧く。まだかろうじて平気だけど、薄くなったら帽子をかぶって隠して、素知らぬ顔で歌い続けよう。わざわざ書かなくていいこと書くを47歳。

自分は顔に似合わず熱い男なのだが、クライアントありきでも自分の作品でも、いま作っているものが過去最高傑作だと常に思うようにしている。だからこれからの自分が作る音楽も、もっともっといいものになる。そう信じてやまないので、いつも明日が楽しみでしょうがない。

なーんていう風に書いているのは、さきほど乙川ともこの新作がマスタリングまで終わって仕上がったからである。非常に良い。エンジニアの竹中さんは本当に天才だ。いつもオーバープロデュースな僕は(トッド・ラングレンを見習って?)、自分の作品だと勝手に思い込んでいるし、やはり最高傑作だと思っている。嘘じゃない。

人生最後の作品はどんなだろうと考えると、今から楽しみだな。もちろんそこに向けて力を加減しているわけじゃない。毎回全力。

でも実際はそれほどポジティブな性格ではないだなぁ。むしろペシミスト。そしてあいかわらず時間に追われ、やりたいことが多すぎて、毎日溺れかけている。泳いで見つけた筏(いかだ)にしがみついて眠り、起きたら次の筏まで思い切って泳ぎ切る。そんな毎日である。いつになったら余裕ができるのだろう。

僕はどちらかというとデリカシーゼロの人間で(つまりかろうじてゼロではない)、言いたいことをその場で、しかも最後までよく言い切ってしまう。沈黙は金だから、いつも貧乏なのかな。ゴホン...…。だからあとでよく後悔もするのだけど、年々それが止まらなくなってきて、しまいにはライブでもそのとき思い付いたことなんかを喋り過ぎるようになってきた(申し訳ない)。

それを改善するために、9月以降のライブはMCをほとんどしていない。そういったゼロヒャク思考癖はあいかわらずだが、このままでは「MCで笑い転げて曲が始まると寝る」という、そんなお客さんが現れかねない。今は10曲あったら、1曲目から9曲目までまずやり切る。最後の曲の前でちょっと喋るかも、くらい。お客さんからしたら映画を見ているような、そんなライブを出来るだけ続けていきたい。

あれは1997年だったか、フィッシュマンズがイベントに出演して、40分ステージの中で1曲40分の曲をやり切って、ほとんど何も喋らずに帰って行った。観ている側、少なくとも自分は5分に感じたくらいで、とにかく圧巻。口もずっとあんぐりのまま。最高のダブミュージックであり、「サブカルチャーこそがカルチャーなのだ」と信じ始めた瞬間のひとつでもあった。HARCOを始めた頃に見たので、自分はそういった憧れも元々あるのだろう。

でもアンコールが来たら1時間くらい喋るかもしれない。そういう恐ろしさがあるので、気を付けてアンコールをしてください。...…という冗談はさておき。でも結局、ある程度は喋るはず、とくにワンマンは。どうかご安心を。早くまたツアーがしたい。

そうそう、それから最近のライブは、事前に曲順を発表している。クラシックなんかはそうで、ピアノの発表会ももちろんそう。幼い時分、フレンチレストランのメニューみたいなものを配られて、それを見て「次は小学四年生か、お手並み拝見」とかなんとか思いながら、演奏を聴いたものだ。「あ、次は僕だ」なんて、すっかり出番を忘れていたり。

こういったいわゆるセトリの事前発表、ロックやポップス界においてはかなり野暮なことだとは思う。きっかけは「HARCOの曲も歌うのかな」と心配されるのが、なんとも申し訳ないから。実はたいてい、半分以上がHARCOの曲なのだ。青木慶則の5年に比べて20年もやっていたものな。BLUE BOYもときどき歌う。当時は叩いていたけれど。

野球では「予告先発」制度がある。事前にお互いのチームの先発ピッチャーを発表しておくのだ。そのことでファンはわくわくする。別名ワクワク制度(とは言わない)。残り8人の打者の方は一応内緒で、当日になって監督やコーチが規定の用紙(短冊のようなもの)に手書きで書いたものを、公式Twitterに公開したりしている。

野球好き(観る専門)なので、その予告先発ならぬ「予告選曲」っていうのも面白いかなぁと。駄洒落だけど、そういうのもきっかけだった。始めたからにはとうぶん続けたい。

この秋はコロナ禍以来で一番ライブが多い。先日からはビューティフルハミングバードのツアーも始まった。鍵盤でサポート。僕以外のサポートメンバーは僕よりみな年上で、サポート経験も豊富。付いていくので精一杯だ。でも演奏しながら、実は誰よりも他のミュージシャンの表情をよく観察している自分もいて、妙な余裕もあったり。ドラマーだったからかな。みんなこっちを見るものな。なぜか。

以前はGOING UNDER GROUNDのサポートも4年くらいさせてもらっていたが、その頃からの習慣がある。ライブの日まで練習ももちろんするけど、前日やその付近になるとテレコを聴きながら、とにかく自分とまわりのリズムのずれを、微細な箇所も含め少しでも多く確認しておく。演奏を高めるには、弾かずに「聴く」ことが肝心。自分のライブの前日もそうだ。練習はやめて声を温存し、とにかく聴く。

いつもまわりに言っているのは、ミュージシャンがリハーサルを聴き返すことイコール、お化粧だったり、髪型や洋服を決めるときに鏡を見ることで。鏡を見ないでお化粧ができる人は、なかなかいないだろう。聴くと基本的に恥ずかしくなるのだけど、恥ずかしがりたいというか。とにかく自分を上書きしていきたい。

、、、おっと、喋りすぎをやめることにしたのだから、書きすぎも良くないな。いつもさらに長くなってしまうけど、今回からはこのくらいで切り上げることにしよう。

いつも最高傑作を作っているつもりなので、今回も最高のコラムが書けたな。と、次のコラムのハードルを自ら上げてしまう、そんなどうしようもない47歳もいるのである。