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 今日は第2,3言語が第1言語とつながっているということについて、私が気づいたことをまとめておきたいと思います。

 言語習得というのは本当に厳しい道のりです。目に見えてすぐに結果が出るものではないものの、コツコツ続けないと力になりません。言語学習を続けておられる人たちに心から尊敬の念を抱きます。

オランダ語の学習状況

ここ数日は、時間や日付、序数や分数、比較などを学習しました。

 「時間」の表現は非常に複雑です。
 4時半を伝えたい時は「5時の半分」みたいな表現をします。
 また、4時15分は「4時から15分後(もしくは4分の1過ぎた)」や、4時45分は「5時の15分前(もしくは5時まで4分の1のところ)」となっており、0分と30分を基準に時間を言うそうです。
 まだ現地語での時間の表現をきちんと聞いたことがありませんが、時間に対する捉え方も違うのだと感じました。
 個人的にはパズルみたいで楽しいのですが、伝えたい時間をすぐに言葉にするのは難しいです。

 「比較級」は英語と同じ感覚でした。形容詞や副詞の単語の意味が分からなくて困ることが多いので語彙力が問題だと感じました。

 「分数」は、日常で使うことはあまりなさそうですが、娘が学校で習った時に分かっておいた方が良いかと思い学習しました。そもそも私は母語で分数の概念を押さえていたので、オランダ語になっても大きな混乱はありませんでした。ちなみに、時間の独特な表現は、分数の基本概念を理解するのに使えそうです。

 「1〜12月」の呼び方は、英語で学習した呼び方によってカバーできます。似ているだけに英語との使い分けが難しいとも感じました。

これまでの学習を活かした30代からの外国語学習

 オランダ語を勉強していて感じることは、日本で習った算数の内容や、英語の文法など、これまでに学習したことや理解した概念を用いて、その表現方法をオランダ語で学んでいるということです。
 これが、子どもが第二言語を学ぶ時との大きな違いだと思います。
 子どもはそもそも母語で使える言葉の種類を増やし、ことばの概念の基礎を作っているところなので、大人と子どもの学び方は全然違います。その点に関しては、親として子どもの言語習得はしっかりとサポートしてあげなくてはいけないと思います。

 違う言語を学ぶ時、自分の考え方が広がっていることを感じます。
 今回の「時間」の表現に関しても、私たちは1分ずつ数えていくのに対して、オランダ語では区切りをつけて見ていることが分かりました。
 これまでの歴史や生活文化が関連しているのかもしれません。これだけでも私にとってみたらとても興味深いです。

「2言語共有説」について

 日本語教室に通っている子どもたちにも、2言語を学ぶメリットを最大限に活かしてほしいと思っています。
 日本語は単に覚えないといけないとか親に無理やり行かされているというのでは、非常に勿体ないです。それなら外で思いっきり遊ぶ方が良いかもしれません。
 私としても、せっかく海外で「日本語で学べる空間」を提供しているのだから、他の言語のレベルアップにも活かせるような授業をしたいと思っています。

 違う言語で学んだことを日本語で復習したり、日本語で学んだ概念を学校で使うことは複言語主義の中では推奨されていることです。
 学校内で二言語をうまく並行して使う(同じ場面で混ぜることではありません)方が学習効果が高いことも紹介されていました。

 バイリンガル教育の理論として「2言語共有説」というのがあります。これは、トロント大学のカミンズ教授が提唱しました。
 異なる言語はそれぞれのチャンネルを持っていますが、深層面では共有面していると考えられます。
 楽器やスポーツを既に習ったことのある子どもが、違う楽器やスポーツを始める時に、初めてそれらをする子よりも到達度が高いことが例として紹介されていました。

 日本語教室においてもそれぞれの言語が別個に存在するのではなく、それぞれが影響しあっていると考えています。
 つまり、日本語を使っていろんなことを主体的に学ぶことができれば、その姿勢がもう一つの言語に転移しやすいことを示しています。

 例えば、学校で習った算数を日本語で復習したり、自分に興味のある理科や社会の内容を日本語で先に学ぶことで、それを他の言語にも応用することができます。

 また、日本語の深く考える力を付けるための練習として、漢字学習も適切だと思います。
 学年が進むにつれて段々と難しくなっていきますが、単に難しいものと捉えるのではなく、漢字それぞれのパーツから連想されるイメージや古代中国の人々が思い描いていたことまで掘り下げて、漢字学習自体にも「考える機会」を設けることは有効だと思っています。

子どもたちのことばに「概念(あるいはその礎)」を

 日本語が第一言語の場合は、ことばを「概念」として捉えるために、正解のある問題に頼るのではないアウトプットを中心とした「表現力の強化」と同様に、「語彙力の強化」にも力を注いでいます。
 これらの学び方は、逆に日本語が第二言語、第三言語の場合は第一言語をより強固なものにするための学びにしたいとも思います。

 このような学習を進めていくには、学習者が学ぼうという気持ちを持ち続けることと、子ども一人ひとりの発達状況に合わせた授業作りが求められます。

 そして、その学習定着度をこちらでフィードバックしながら複数言語の環境の中でも日本語の力を高めていける学びを提供できるようにしていきたいと思います。

<参考文献>

・中島和子『完全改訂版バイリンガル教育の方法-12歳までに親と教師ができること』(アルク選書、2016)
・今井むつみ、針生悦子『言葉をおぼえるしくみー母語から外国語まで』(ちくま学芸文庫、2014)

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