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公立学校の先生を苦しめる現状を制度面から理解するために【364】

 昨年出版されたPHP新書の『先生がいなくなる』を読みました。公立高校で働いていた時に感じていた、公立高校に勤務する教員の労働環境の問題点は未だに解決する方向に向かっておらず、その原因は制度に問題があるということがここ最近理解できたことです。
 さらにこの書籍は、学校の先生がどんな状況にあるのかを客観的に理解することができます。当事者である教員が読むことで、自分にのしかかっている負担は全国で問題になっていること、それを解決することが重要だと思って動いてくれている人たちがいるのを知ることができます。
 また、公立学校の状況があまりよく分からないという方にも、状況が分かりやすく書かれており、先生の超過勤務が子どもたちにもたらす悪影響についても理解することができるので、学校は先生だけでなくいろんな大人が関わることが重要だということがわかると思います。

 今回、私が重要だと思ったことを記録していますが、公立学校の現状が少しでも理解したいと思った方は本書を読んでいただきたいと思います。
 子どもたちのために日々一生懸命働いている先生方が、これ以上追い詰めることがなくなり、健全な環境の中で幸せに働けるようになることを望んでいます。

日本の公立学校の先生が幸せでいられるために

 長時間労働は、子どものためだから仕方がないと思い込んでいた現役時代。「子どもたちのためになる」と思ってずっと学校にいると、視野がせまくなり、クリエイティブな活動や社会情勢の変化を現場に取り入れることが難しくなります。
 さらに、過去の自身の体験や自分のやり方に固執してしまい、かえって子どもたちの発達を阻害していることに気づけなくなる、ということに最近気づくことができました。

 なぜこんな状況が生まれてしまったのか。
「学校現場は特殊な場所だから働き方改革はできない」という思い込みを改めるために必要な情報がこの書籍に書かれています。

 日本以外の労働事情や、日本の中でも国立や私立の学校とは適用される法律が違うことなどを知ると、「日本の教育」ではなく「日本の公立学校」の労働環境の問題点がよく分かります。

 ここで紹介されていた働き方改革の例は、別の著書『学習する組織』に書かれていた取り組みと同じアプローチがあったのが非常に興味深かったです。今はオランダにいますが、私自身が何か日本の公教育に役立てることを考えたいと思います。

書籍から学んだこと

・公立学校の長時間労働は解決しようがないというのは誤解であり、問題と向き合うことで解決策を模索できる
・給特法によって、労働時間の管理の必要性がなくなるため、その法律を廃止することで働き方改革は進行する
・長時間労働が子どもたちのためになるという誤解
・「先生でとしての時間」以外の時間を持つ重要性
・教員の働き方について、「国家予算オーバー」の状況ということは、それ以上働くとそれは民主主義を無視することになる(そうは言っても、子どもたちのために働きたいという善意が悪用される)

幸せな大人がいるから子どもが幸せになる

 先日、日本に一時帰国した時に話した元同僚の先生達は、多忙な業務に頭を抱えていました。みんな素敵な人柄の先生ばかりで、生徒達はこの先生と関わることで新しい世界が見えるかもしれないと感じます。

 その先生たちがより魅力的になるには、学校の外の時間を充実させることが必要で、もっと外に出られる環境になってほしいと強く思っています。私は自分の考えをしっかりと伝えるタイプだったので管理職に忖度することはありませんでしたが、若い先生はいろんな業務(部活動やその他いろんな雑多なもの)を抱え込んで、未だに自分が納得のいく授業ができていないという話をしてくれました。

 私が現場にいた時に出会った心から尊敬する素敵な先生たちは、今も厳しい労働条件の中で「子どもたちのために時間外でも勤務しろ」という無言のプレッシャーの中で働いています。
 現場にいた自分としては、公立学校の先生は決して能力が低いわけではなく、彼らの能力を発揮できない環境になってしまっているため、そのシステムを変えることが急務だと強く感じます。

 働く先生が幸せなら、子どもたちも幸せ。
これが贅沢ではなく当たり前になる感覚が広がったら良いと思います。

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