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オランダに暮らすパパとの会話から感じた「労働観」の違い - ビーチで1年間お疲れ様会その②【008】

物事を良し悪しではなく、バランスで考える人たち

 ビーチでは子ども達がみんなのびのびと遊んでいる間、大人達は自分たちの話に花を咲かせていました。何人かのパパと会話する中で必ず聞かれたことは、「なぜオランダに来たの?」「オランダにはずっと住むつもりなの?」という質問でした。確かにオランダの人たちからしてみれば、「なぜわざわざオランダに来たんだろう?」「オランダ語が話せないのになぜ現地校に通っているのだろう?」など色々と疑問を持っているのだと思います。

 「私は公立の学校で高校の教員をしていました。日本では若者の自殺も多く、学校の先生は働きすぎていて精神的な病気にかかってしまう人がたくさんいます。自分は教育現場で働く人間として、『子どもが社会に出て幸せに暮らせるようになるための教育とは何か』についてのヒントが欲しいことと、学校の先生が『自分らしさを失わずに働き、幸せな大人として子どもたちを幸せに育てられる』環境に変えたいと思っています。そのために『子どもが世界一幸せだ』と言われるオランダの教育や社会について学びたいと思って夫婦で話し合い、ここに住むことにしました。そして、いつかは日本に帰って日本の公教育に貢献したいと思っています。こちらの教育システムと社会がどのように関わっているのか、オランダの教育がオランダに住む人々にどのような影響を持っているのかをこちらで知りたいと思っています。」

 英語でのコミュニケーションで精一杯だった私は、きちんと伝わっていたかどうかは分かりませんが、こんな内容を伝えたと思います。そして、話を聞いてくれていた人達は、私が一生懸命に伝えようとしている姿勢をあたたかく見守り、「オランダと日本の良いところをミックスして新しい形の教育ができるといいね!」と言ってくれました。これまで「世界一子どもが幸せな国」とされたオランダの教育を受けてきた人たちは、自分たちの教育が一番良いと思っているような雰囲気は全くなく、「物事には良し悪しはつきものだからバランスが大切だよ。」と言っていました。

 オランダの子どもが世界で一番幸せだというユニセフの報告とは裏腹に、本人達は、自分たちが幸せな国に住んでいるという感じを出すようなことはなく、「良い部分もあれば悪い部分もあるよ」という感じでした。むしろこの「他の国や人と比べてどうこう考えない姿勢」こそが、子どもが幸せに育つのに必要なものかも知れません。

「オランダの教育にだって欠点はあるよ。」
 もちろん完璧な教育など存在しないので、それも納得できます。オランダの教育の欠点について詳しく聞くことができなかったので、またどこかで聞くことができたらと思います。

そんなに長く働いてクリエイティブな発想が可能なの?

 あるパパとの会話の中で、「新聞かインターネットの記事か何かで読んだんだけど、日本人の働く時間が相当長いって本当なの?そして今もなの?」と聞かれました。実際に私が高校で働いていた時の生活について話すと、「冗談だろ!!そんなに大した休みもなく長く働いて、体とか頭をいつ休めるの?自分の趣味はどうするの?仕事のパフォーマンスは落ちないの?全然違う世界で働いている友達とかに会って頭をリフレッシュさせないの?そもそもその状況で誰か何か言わないの?」さすがオランダで生まれ育った人の発言。まさにその通りだと思いました。

 私が働いていた現場では、私も含め毎日どの先生も、常に仕事に追われながら日々を過ごしていました。休日でも、部活動やその他の業務の関係で学校に来ている若い先生も多く見られました。

 働いている日々の中で、ゆっくり子ども達と会話したり、授業についてじっくり考えたり、他の先生と何かについて議論したり、学校外の人とじっくり話をする、などということはあまりできなかったように思います。また「私が働いていた高校(もしくは日本の職場?)では、なぜ根本的な問題について話し合う機会が少なかったのだろう?」という疑問が出てきました。私が高校現場で働いていた時のことを振り返ってみると、「個人よりも組織」という同調圧力を感じる場面は強かったように思います。それに比べオランダで育った人々は、幼い頃から家庭や学校で他の人の考えや意見を尊重しつつ自分の考えを表現する大切さを教えられ、議論の場をたくさん経験してきています。何か解決しなければいけない問題が起こった時、みんながやっているから我慢するとか、これまでそうだったから同じやり方をとる、というような話の進め方はないようです。

問題があると思うなら、それをみんなで話し合って解決に向けて進めないとね。」という実に合理的な考え方でした。かつて日本と同じような保守的で同調圧力の強かったと言われるオランダがなぜここまで変われたのか、これについても今後オランダで育った人にインタビューしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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