見出し画像

 学校がある時と比べ、夏休みの日本語教室に通う子どもたちは、いつもの授業よりたくさん話をしてくれます。最近読んだ絵本の話や、旅行の話、友達と遊んだ話など色々です。ちなみに夏休みの授業は、通常授業よりも「日本語を楽しむ」をテーマにして活動しています。

子どもたちは伝えたいことがいっぱいある

 最近、家から図鑑や折り紙などを持ってくる子がいます。子どもたちが自分の好きなものを持ってきて、私はそれを日本語学習につなげるようにしています。家で練習していた折り紙ができるようになり、私に見せるために持ってきてくれるのです。

 「授業に関係ないものを、、、」なんていうことも考えました。確かに、学校のような集団の場であれば、ある程度秩序を保つために規制が必要になるかもしれません。しかし、私の日本語教室は「個人」あるいは「小集団」の形態になるので、子どもたちの持っている世界も日本語学習に活かせば良いのではないかと考えました。せっかく子どもたちが日本語でつながりを作り、日本語で話すきっかけを作ろうとしているのに、大人がそれを阻んでしまってはもったいない、むしろ持ってきたものを使う時間とそうでない時間のメリハリをつけて学習してもらうことを考えました。

 子どもたちは、自分で持ってきたものを一生懸命に説明します。時には、お気に入りの絵本を読んでくれたりします。私も興味を持って話を聞いていると、絵本の一部のシーンを説明したり、図鑑に書いてある説明を一生懸命に読んでくれます。そして、私も「なぜそのシーンが好きなの?」「その好きなシーンはいつ起こった話なの?」と聞きながら日本語での詳しい説明を求めていきます。子どもたちはお気に入りで持ってきたものなので、いつも以上に熱心に考えて話そうとしてくれます。これだけでも表現力を鍛える学習になるのではないでしょうか。

その後の授業は意外と集中できる

 好きなものを持ってきて行う日本語学習は、子どもが満足いくまで取り組みます。すると、その後授業で行う「漢字」や「日本語表現のトレーニング」はいつも以上に集中していることが多いです。

 これは私の推測ですが、自分が伝えたいことを相手に聞いてもらうことで気持ちがスッキリするのかもしれません。その後の子どもたちは、課題に集中して取り組み、いつもより短い時間で多くの課題をこなしています。

子どもの学習環境の整備

 私はこの夏休みの授業を通じて、授業に集中できるようにするためのコンディション作りがとても大切だと思いました。子どもたちは、いつ自分のお気に入りのものを持ってくるか分かりません。そのため、その日に取り組むつもりだった学習課題が思ったよりもできないことがあります。しかし、子どもの立場に立って考えてみると、自分が先生に見てもらおうとして持ってきたものを受け止めてもらいいろんなことを聞いてくれたら子どもたちも喜んでくれると思います。すると、日本語学習へのモチベーションも向上するはずです。

 もちろん、こちらで優先したカリキュラムも学んでもらう必要があります。しかし、仮に子どもの好きなことを学びにする日であっても、漢字や表現のトレーニングを全くしないというわけではありません。少なくとも子どもが先生に受け止めてもらったという安心があれば学習にも集中して取り組むことができます。

 何かに間に合わせるために、目の前の子どもたちの気持ちを後回しにするのではなく、子どもが「やってみたい!」と思っているそのタイミングを逃さないようにしたいです。きっとその方が、子どもたちにとっても心の成長につながるはずです。

 これからも、授業に集中するための子どものコンディション作りも含めた日本語学習サポートを続けていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?