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日本語教室に初めて来た子どもとの関わり【Aflevering.29】

少人数学習のまとめ

 以前は「少人数学習」について私の考えをまとめました。
 海外で子どもが日本語を学ぶ場合、日本語を使う場面そのものが限られていることが多いと思います。
 また、日常生活の中で日本語にどれだけ触れる機会があるのかの違いによって、同じ年齢であっても日本語の理解力には差があります。これは決して能力の差ではありません。
 そのため、指導者はそれぞれの子どもの日本語に関するスキルを把握する必要があります。
 また、子ども同士の会話を活発に行うことで、日本語学習に対するモチベーションも高めておく必要もあります。

 つまり、そうした環境下での日本語学習について、「少人数学習」は個別指導と集団指導の中間の役割があり、それぞれの利点をうまく生かすことができると考えています。
その利点とは、

① 子どもとの距離が近く、子どもの学習状況が把握しやすい
② 子ども同士が交流できる機会を確保する

というところです。

 また、少人数であることのメリットを最大限に活かすため、少人数に見合った学習内容と授業展開を考え実践していかなければなりません。

子どもとの関係づくり

 今回の記事では、日本語教室に初めて来る子どもたちにどのようなアプローチをするのかという観点で書きました。
 海外で日本語を学べる時間は限られています。基本的には、週に1度日本語で学ぶ機会を提供するという立場ですが、日本語教室での学びを社会に出るときに必要な「スキル」を育てることにつなげたいとも思っています。

まずは子どもと「話す・遊ぶ」ところから

 初回の授業では、マンツーマンになれる時間に来てもらい、子どもとじっくり関わることからスタートします。いきなり教材を使うことはほとんどありません。
 初めて教室に入る子どもは、必ずと言っていいほど緊張しています。まずは子どもが話しやすそうな話題でいろんな話をしながら、私という人間を理解してもらうための時間にします。
 その後、家族や友達のことを聞いたり、好きな遊びや好きな場所、家でどんな過ごし方をしているのか、子どもに関わる情報を聞いていきます。この時に、子どもがどんなことを日頃考えているのかをこちらで把握し、どんな授業展開が望ましいのかを考える参考にします。
 そして、いくつかこちらが聞きたいことを確認し終えたら、子どもにも質問はないか尋ねます。それが終わったあとは、ボードゲームやすごろく、その他知育系のゲームなどをして遊びます。どの遊びが良いかを選んでもらい、とにかく子どもが日本語を話すきっかけをたくさん与えます。
 この時に、子どものことばや行動をよく観察することが重要です。どの程度の日本語の力があるのかを確認しつつ、本人の性格を分析していきます。

 次に、「日本語教室での学習」に関する話をします。
 この教室に何をしに来て、何を学ぶのかについてじっくりと話します。
 どこまで深く掘り下げるかは、年齢によって異なりますが、必ず全員に尋ねるようにしています。
 日本語教室に通うのは誰の意志なのか、ここでどんなことができるようになりたいのかについて教えてもらいます。
 子どもによってその答えはさまざまですが、ただ「親に言われて来た」という子もいれば、「友達と日本語の勉強をしたい」や「日本語を家で話すからきちんと習いたい」という子もいます。
 本人の意思を確認した後は、どんな勉強をしたいと思っているかを聞いていきます。
「漢字をやってみたい」「日本語の本を読めるようになりたい」など、本人にとって日本語学習における最初の目標を決めてもらいます。そのためにどんなことをする必要があると考えるのかも聞いていきます。

 まだ学齢期に至っていない子どもの場合は、あれこれと聞いても「よく分からない」と答えることも多いので、簡単な話をいくつか聞いた後は、遊びの時間を作ってたくさん交流を深めるようにしています。

「日本語教室に行くのが楽しみ」と思ってもらえるように

 初回の授業では、日本語教室に通う子どもがポジティブなイメージで通えるように、私との関係づくりをしっかりと行います。
 ただでさえ、日本語学習の時間が限られているというのに、「今日は日本語教室か、嫌だな」と思うような場所だと、こちらが定着させたいと思う日本語の力も定着しません。
 必ずしも私のアプローチがみんなに通用するとは限りませんが、日本語教室を安心できる居心地の良い場所だと思ってもらえるよう努力しています。

 また、子どもが日本語教室を楽しい場所だと思ってくれたら、たとえ難しい勉強になっても、それを乗り越える力を発揮してくれます。
 私は脳科学の専門家ではありませんが、その観点からも、日本語教室の場所が好き、友達が好き、先生が好きという、「好き」というは学習に結びつくとても大切な気持ちなのだそうです。

 海外での日本語学習においては、もちろん楽しいだけでは乗り越えらない壁もあります。しかし、その壁にぶつかった時に、それを乗り越えるための準備を最初の段階から始めていこうと思っています。
 今回は、子どもとの最初の関係づくりについてまとめました。次回からは、実際に日本語の学習をどうするのかについて私の実践を記録しておきたいと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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