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Cambridge IGCSEの「経済(Economics)」科目説明と学習内容の概要[331]

 日本では、公共や政治・経済の中に位置づけられている「経済」ですが、IGCSEのカリキュラムで学ぶ中学生やIBDP(国際バカロレアの高校生に当たる)で学ぶ生徒たちは、社会科の中の選択科目として「経済」を選択します。
 今考えてみれば、経済について1年間かけて学ぶというのは非常に魅力的であり、実世界から離れた机上の空論のようにならないように経済について学べることは重要です。私が公立高校にいた時は、経済という分野で、実社会とのつながりはあまり強調されていなかった記憶があるので、今回はIGCSEのカリキュラムで学んでいる生徒たちがどのように経済を学ぶのかをまとめていきます。

 IGSCEのカリキュラムについては、Cambridge IGCSEのHPに掲載されているシラバスを参考にしました。
 このシラバスは、2023年9月に出されたもので最新のものになります。これはPDFになっているのでどなたでも読むことができます。本文は全て英語で書かれており、それを読みながら日本語としてまとめました。そのため、少しニュアンスがずれているところもあるかもしれませんが、何かお役に立てると幸いです。


ケンブリッジでの学習のイメージ

自信から行動しそれがまた自信につながるループ

 学習のイメージのところに、「自信→責任→思慮深い→革新的→従事→自信」のループが描かれていました。スタート地点はどこからでも良いと思いますが、生徒本人に自信があることで学習に責任が生まれ、共に学習する仲間への思いやりを持ち、共に学ぶことで革新的なものが生み出され、それらに取り組むことでさらなる自信へとつながることが書かれているように考えました。

国際的に評価されるIGCSEの学び

 Cambridge IGCSEのカリキュラムは、学術的な成功の根拠として世界中の大学や雇用主に受け入れられ、評価されています。そのため、生徒がこのカリキュラムで学ぶことで国際的に求められる学びができているという自信をもって学習に取り組むことができます。

経済を学ぶ主なメリット

 ここでは、シラバスに書かれていた"Main Benefits"に関してまとめておきます。以下書かれていたものを日本語で表しました。

・経済の理論や専門用語、原則について理解する
・経済の分析に関するツールを適用する能力が身につく
・経済的な問題についての事実と価値判断を区別する能力が身につく
・基礎的な経済の計算と能力を理解し、使う能力が身につく
・毎日の生活の中で意思決定におけるプロセスでより重大な役割を果たす能力が身につく
・さまざまな経済の例を用いる能力が身につく
・経済学における高度な研究のための素晴らしい基礎をつくる

科目の狙い

 こちらは、科目でどのようなことをねらいとするのかが書かれていました。

・経済の用語や概念、理論を知り学ぶ
・経済的な計算や経済のデータを解釈する
・経済的な分析におけるツールを使う
・論理的かつ明確に経済的な考えを書いて表現する
・経済で理解したことを現在の経済問題へ適用する

学習内容の概要

 ここからは学習内容について、大きく6つのパートに分かれています。それぞれのテーマでいろんな実例に触れながら学んでいきます。まずは、それぞれがどのようなコンセプトで学ばれるものなのかを見ていきたいと思います。

①基本的な経済の問題

 最初のこのセクションは、基本的な経済の問題、生産の要因、機会費用や生産可能性曲線(PPC)を含む、経済の学びを実証する基本的な考えや概念を紹介する

②資源配分

 資源配分の基本的な原則は、市場経済における価格メカニズムを通して考えられる
需要と供給の市場の強制力、市場の均衡と不均衡と価格弾力性はこのセクションの中核を形成する

③ミクロ経済の意思決定者

 ミクロ経済は重要な研究分野であり、ここで取られる学習へのアプローチは、銀行、家計、労働者、労働組合、企業などの主要な意思決定者の役割を通じて行われる

④政府とミクロ経済

 政府は異なるマクロ経済目標を持っており、それらを達成するためにどの措置を選択するかでしばしば対立が生じる
 変化の原因と結果を考慮するために変数を測定し、適切なポリシーを適用する必要がある

⑤経済発展

 経済が発展することで、人口、生活水準、貧困、所得の再分配に変化が生じるだろう
 したがって、人口の規模と構造の変化、およびさまざまな国の開発に対するその他の影響が調査される

⑥国際貿易とグローバリゼーション

 国家間の貿易の重要性とグローバリゼーションの成長が探求されている
専門化、自由貿易の役割、多国籍企業の役割、為替レート、国際収支の安定性などの原則が考慮されます。

実世界に存在する実例に基づいた学び

 私が日本語でサポートする生徒は、IGCSEのカリキュラムで学んでいます。ここで紹介しているカリキュラムとは少し異なりますが、現行のカリキュラムで学んでいる内容を見ていると、必ず実例を用いて、そこで学ぶトピックへの理解を深めています。経済の理論においても、実際にはどのような時に起こるのか、またそれによる問題などを他の考え方と比較するので、学習のレベルとしては非常に高いとともにしっかりと考えることが授業の中で求められているのがよく分かります。  
 このように、しっかりと認知に負荷をかける学びは私にとって非常に魅力的であり、深く考え学ぶ力は社会に出てからも大切なツールです。こういった学習を日本のいろんな学校でも実践できるようになれたら良いと考えています。

学習を変えるなら「評価(何のために学ぶのか)」から考える

 しかし、学び方を変えることは簡単ではなく、受験のシステムや学習に対する人々が持つ価値観も同時に変える努力をしなければ達成できません。少なくとも、最初に評価方法が変える方向性にしていかなければ、学びが変わることはないでしょう。そのため、評価についてもう少し知る必要があると考えます。
 次回以降は、シラバスの続きを読んでいき、IGCSEの評価方法や学習内容について詳しく見ていきたいと思います。

<参考>
Cambridge IGCSEカリキュラム

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