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意見 = 本人の意思表示 ≠ 相手の否定【Aflevering.67】

 「生徒(部下)が先生(上司)に意見をする」というのは、一般的にどのように捉えられるのでしょうか?

 先日、中学生クラスの小論文対策をしている時でした。
 生徒と宿題に関する打ち合わせをしている時に、「私が先生に意見したら、先生は嫌な気持ちになりませんか?」と聞かれました。
 その瞬間私は驚きました。これまでに何度も宿題や授業の進め方について、お互いの考えを共有してきた生徒でしたが、それでも立場の違いによって意見が言いにくいのかもしれないと思いました。それと同時に、ふと高校教員をしていた時のことを思い出しました。

 以前、「心理的抵抗と知的生産」の記事で、ヘールト・ホフステード氏の「権力格差」についてまとめました。


 そこでは、部下が上司に反論したり、意見を述べやすいかどうかが知的生産に影響し、この文化コミュニティ内の親子関係や学校の教員と生徒の関係にも影響するという話を紹介しました。

高校教員時代の記憶

 私が学校現場にいた時は、生徒が教員に授業について意見することはほとんどなかったように思います。
 私が勤めていた自治体では、授業を評価するアンケートが実施されていました。生徒たちが授業について何かを思っていたとしても、面と向かってその考えを表明するというよりは、アンケートによって間接的に教員に伝わっていました。それに対して、「そういうことじゃないんだよな〜」「生徒はわかっていない」と言っていた教員もいました。
 私は、アンケートで後から言われてもどうしようもないと思っていたので、毎回コミュニケーションペーパーを配るようにしていました。

 私の生徒との関わりについて上の記事にてまとめております。もしご興味があればご参照ください。

生徒の声に授業改善のヒントがある

 学習者の意見に耳を傾けることで、自分の教え方がその生徒の身になっているのかどうかを確認できます。
 また、確認することによって生徒にも当事者意識が生まれ、考える機会につながり、生徒との会話が増えお互いの信頼関係が深まるメリットがあると考えています。

 私が授業をする時、必ず「授業の進め方」「課題の内容」「説明したことで分からなかったこと」などを逐一確認しています。

 小学校低学年の子どもの場合は、何をやるのか何のためにやるのかを説明し、学ぶ順番を決めてもらい、その後の振り返りをしています。もし子どもからの意見が出てきたら、その意見に耳を傾けます。

 小学校高学年の場合は、日本語学習をどう進めていきたいのかについて生徒の考えを聞いた上で、学習方法を一緒に考えるところから始めています。具体的な方法についてはこちらから提案もしますが、方針や今の学習方法についての判断は、学習者及び保護者も一緒に考えてもらいます。

 指導者と学習者の違いはあれど、お互いの立場は対等で、共有したゴールに向かうパートナーだと考えています。今自分がやっていることについての疑問や不安を解消し、ゴールに向かうために集中できる環境づくりを心がけています。

生徒に伝えること

 「僕が授業で大切にしていることは、学習している人自身が学び方に納得して、『今自分は学んでいるんだ』と感じていること、自分が設定した目標に向かって進めていると実感していることなんです。僕が考えている授業方法が、生徒に合うかどうかは分からないし、授業を受けている人が感じていることも聞かないと良い授業は作れないと思ってるよ。学習を前向きに進めていくための要望なら意見として伝えてね。そこで僕の考えも伝えるから、どうしたら良いかを一緒に考えよう!」と伝えました。

 私たちは、性格や人生で経験してきたこともみんな異なるため、生徒にとってよりよい授業方法というのはそれぞれ異なります。

 大事なことは、生徒が目の前の学習課題に全力でぶつかり、全力で授業に取り組める環境を作ることです。
 そのために必要なコンディションや環境づくりのために、学習者の考えに寄り添い、できる範囲で協力することも私の役割だと思っています。

「意見する自由」と「行動する責任」

 学習者の「意見する自由」を尊重し、意見を表明しやすい環境を整えるように努めますが、同時に学ぶという「行動」に対する責任は取ってもらいます。

 そうすることで、「学習は自分でやるもの」という意識づけをすることができます。また、私たちはあくまで学習を支えるサポーターだということを理解してもらえます。

 また、誰かから決めたものを与えられて「消費」するのではなく、自分が意見を表明することによって学びへの主体性も生まれます。
 そして、自らの責任で学び始めた学習者は、学びを「生産」する立場から自分の行動について振り返ることで、軌道修正ができる柔軟性も高めることができると思っています。

 子どもたちの様子を見ていると、ただ先生が決めて与えられた内容を処理するよりも、一緒に相談して決めた内容に取り組んでいく時の方が生き生きとしているように感じます。これからも子どもたちの様子を観察し、一人ひとりに合ったサポートを考える力を付けていきたいです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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