書くルールよりも「書く喜び」を感じる作文指導を目指して[446]
オランダのデン・ハーグにある学習教室の日本語クラスでは、子どもたちが作文を通して自分を表現することの喜びを感じられるサポートを心がけています。今日は久しぶりに教室でのレッスンが再開され、子どもたちの文章表現について感じたことをまとめます。
作文好きと作文嫌い
作文が好きになる子と嫌いになる子とではどのような違いがあるのでしょうか。それはもちろん、文章を書くことが得意なのか苦手なのかということが影響することもありますが、作文を書いた時に「形式や誤字脱字のチェックが中心になる」のか、「書いた内容にフォーカスして作文が読まれる」のかで子どもたちの文章表現に対するモチベーションは大きく異なってくると思います。これは子どもの表現に対してポジティブな面で捉えるのか、ネガティブな面で捉えるのかの違いであり、その見方の違いが子どもの作文に対する好き嫌いに影響しているのではないでしょうか。
例えば、何気なく子どもが保護者の方に手紙を書いてきたとします。その内容を見て「間違っている文字を指摘したり、表現がおかしなところを指摘する」方もいるそうです。その子がわざわざ書こうという気持ちを持ってくれたことや、一生懸命に言葉を考えて表現してくれたことに目を向けて喜びを伝えると、きっとまた書こうと思ってくれるはずです。そういった書くことに喜びを感じる経験をした子たちは、自らもっと上手くなりたいと考えるようになり、時間をかけて自然と豊かな表現ができるようになっていきます。
休み明けの課題「夏休みの思い出を作文にしよう」
夏休みを終えた子どもたちが日本語クラスに帰ってきました!プレクラスでは絵日記を授業の中で一緒に書きますが、小学生から上の年齢の子たちは夏休みの作文というテーマで思い出を書いてきてもらいました。みんなそれぞれの夏休みの思い出をいきいきと話してくれる様子はとても素晴らしいです。
正しさにこだわりすぎないために
作文の課題について、保護者の方にお願いしていることは「間違いやおかしいと思うところがあったとしても、不必要に指摘はしないでください」とお伝えしています。子どもの日本語学習の目標にもよりますが、基本的には自分の力で書いて(親にアドバイスをもらったり、気になったところは見てもらってオッケー!)、自分で修正できるところはできる範囲で修正していくことを促しています。書いている時に気づかない間違いも、いざ授業で声に出して読むといろいろと直すべきところ(助詞が抜けている、点の打ち間違いなど)が見つかって、そこは一緒に修正しています。「いざ読んでみると書いた時には見落としてるところに気づけるよね」ということがさり気なく伝わるように、自分の間違いに自分で気づくことを大切にしています。
形式へのこだわりは子どもの発想を阻むことがある
他にも作文にはいろいろと書くための形式があります。ある程度の枠の中で表現する(最初は1マス空けるとか、タイトルと名前は別の行でとか)ことも大切なのですが、形式通りに書くことよりもまずは「書く喜び」を大切にしています。
その理由として、形式通りに書く場合、こちらからの指示が多くなったり違うところの指摘が必要になるからです。継承語として日本語を学ぶ場合、モチベーションを維持することが何よりも難しい中、不必要な指摘はそれを奪うことにつながりかねません。
もちろんそういった「形式に合わせて書く」ことは大切なのでないがしろにするわけではありませんが、どちらかというと二の次で考えます。書くことに慣れてきてから、作文には読み手がいるということがきちんと理解できた段階で、「どうやったらもっと見やすく書けるかな?」という問いの中で例を見ながら本人と一緒に考えていくのがベストだと思っています。
レッスンの中では、作文の内容が「会話のテーマ」となる
Edubleの作文課題では、子どもたちが書いてきた文章を音読してもらい、その場で間違いだと思ったところは修正してもらいます。そして、書いてきてくれた内容についていろんなインタビューをします。
「そんな場所があるなんて知らなかった!それはどんな場所だったの?」
「すごく面白そうなことをしたんだね!誰か他にも一緒に行ったの?」
「そこに行って何かやったの?」
など作文を中心に会話を行い、説明を促すこともしています。子どもから自主的な学びの中で、どうしても直しておくべき誤字脱字を訂正したり、表現方法に関する確認なども取り入れていきます。
講師が子どもたちの作文に興味を持つと、子どもたちも色々と書いてくる
作文についてコメントをしたり、内容に関する話題で話すと、子どもたちは次第にたくさんの情報を作文に書いてくれるようになります。こちらが子どもたちが書く文章を読むのを「楽しみにしている」という姿勢がとても大切だと思っています。継承語である場合は、「たくさん日本語表現をしてくれる」、これだけで十分な成果なのではないでしょうか。
作文はまず「表現する喜び」から。こうするとたくさん書くように伝えなくても自然と文字数が増えていき、次第に形式や構成などのレベルにつながっていきます。
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