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IGCSE History「歴史」のシラバスを読む〜科目の説明と評価目標【401】

 大学入試や校内の規定でガチガチに固められた中で、クリエイティブな授業をしようと思っても、自由な発想で授業を展開することはかなり難しかった記憶があります。日本国外で社会科がどのように教えられているのかを調べると、「社会の勉強はこういうふうに考えたら良いんだ!」や「そもそも評価規準が変わらないと授業や定期考査を変えるのは難しいかもしれないけれど、今の状況でできることは何かな?」という次のステップに進めると感じられるようになりました。そこで、現在私がインターに通う生徒たちの学習サポートをしている中で気づいた社会科における新しい学びの可能性について記事にしておきたいと思います。私はIBやIGCSEのカリキュラムで学ぶ子たちのサポートをしていますが、試験は論述が求められます。
 今回は私自身の興味でIGCSEの歴史についてのシラバスが見つかったので、その内容を日本語に変換したことを記事にしています。

脱暗記の社会科の授業を目指して

 日本の公立高校で社会科を教えていた時に、暗記に頼りがちな社会科の勉強をどのように変えたら良いのかがはっきりとせず、日本国外のカリキュラムではどのように社会科を学ぶのかを学びたいと思いました。その頃、ちょうど試験に論述形式の問題や授業で探究学習を取り入れたいと思っていたのですが、一般的な日本の高校生が言語を運用する能力に課題を感じていたのでIB(国際バカロレア)の言語分野について調べていたところ、歴史の科目についてもどのように学ぶのかも知りたいと思うようになりました。しかし、日本語の資料は一部あるものの、細かい資料は英語で書かれたものなので深く学ぶのに時間がかかりました。その後家族でオランダに移住し、生徒の日本語学習のサポートをする中でケンブリッジ式のカリキュラムにも出会い、IGCSEの社会科目の内容についても学ぶことにしました。
 IGCSEもIBも論述系の最終試験が用意されており、知識そのものを評価するのではなく知識をどのように活用するのかに焦点を当てた評価することで、授業や日頃の課題も変化し、言語活動も活性化されるようになると感じました。このように、今回はIGCSEの歴史の内容について日本語にしたものを記事にしましたので、社会科の学びを見直すきっかけとして役立てば嬉しく思います。

学習者に期待される発達

歴史を学ぶ上で、以下のような項目を発達させることが期待されています。

・過去について学ぶことへの関心と熱意
・過去の個人、人々、社会における知識と理解
・歴史的証拠の性質とそれらを使用することへの理解に根ざした知識
・重要な歴史的概念の理解:原因と結果、変化と継続性、類似性と違い
・歴史における国際問題の理解
・調査、分析、評価、コミュニケーションスキルを含む歴史的スキル
・さらなる研究と個人的な関心を追求するための健全な基盤

科目の内容

 歴史の学習では、主な内容は決まっているものの、「学習者が興味を持ち、挑戦するための柔軟性」を確保されます。そのため、「教員は必要に応じて学習者の研究をサポートするためのトピック、主題、リソース、例を選択する責任」があるとされています。トピックなどを選択する際には、学習者の年齢、文化的背景、学習状況に適切であるとともに、学校の方針や地域の法的要件を遵守する必要があります。つまり、シラバスで定められていることは主な方針であって、細かい内容については教員に委ねられていることので、自分で学習内容を選択する余白が残されています。

評価目標

 ここの評価目標の説明だけでは少しわかりにくいかもしれません。試験では一部単語で答えるようなものもあるようですが、主な評価は論述で行われます。その論述に関する評価規準もきちんと設けられることで、試験の問題として活用できます。細かい評価規準については、別の記事でまとめておきます。

①評価目標1(AO1)
 知識を思い出し、選択、整理、展開する能力

②評価目標2(AO2)
 以下の項目の理解を使って歴史的説明を構築する能力
・原因と結果、変化と継続性、類似点と相違点
・過去の人々の動機、感情、意図、信念

③評価目標3(AO3)
 歴史的文脈において、さまざまな情報源を証拠として理解、解釈、評価、使用する能力

1つの試験で全てを評価するのではなく、試験の中で観点を分けて実施しています。

・評価目標の比重
 AO1(30%)、AO2(45%)、AO3(25%)

・各項目の割合としての評価目標
 AO1:Paper1(33%)、Paper2(20%)、Component3とPaper4(38%)
 AO2:Paper1(67%)、Paper2(0%)、Component3とPaper4(62%)
 AO3:Paper1(0%)、Paper2(80%)、Component3とPaper4(0%)

 次回からは具体的な学習単元や取り扱うテーマなどをまとめていきたいと思います。今回細かくまとめることができなかった評価規準についても、新しい授業スタイルのヒントに活用できると思いますので、参考になれば幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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