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Eduble日本語教室、オンライン家庭教師記録(2020〜)

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オランダのデン・ハーグで運営している学習教室や、オランダ以外の日本その他の国在住の生徒のオンラインサポートの記録をしています。授業で大切にしていることや、私自身が学んで気づいたこ…
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2021年5月の記事一覧

「学び」に教科の領域はあっても境界はない【Aflevering.43】

 Eduble日本語教室では、国語以外にも算数のパズルを解く時間を設定する時があります。  算数の基礎を現地の学校で習ってきているので、四則計算を使ったパズルを解いて、日本語で説明してもらう活動などを取り入れています。  計算や考えるのが好きな子にとって、こういったパズルの取り組みも、立派な日本語学習になります。例えば、学校で習った割り算がいまいち理解できていなくて、それを日本語教室で復習した場合、学校での算数の学習に転移させることができます。  複数の言語を同時に混ぜて

学習者が求めていることを見極める【Aflevering.44】

 今日は2か月ぶりに新規の小学生が、トライアルとして授業に来てくれました。  以前あおぞら教室で会っていたので私と面識がありましたが、初めて教室に来る時は少し緊張した面持ちです。  私としては、子どもたちが今までは知らない場所に来て、そこで新しいことを学んで、「新しい自分を手に入れ」てどんどん成長してほしいと思っています。  日本語教室でどんなことを学びたいと思っているのか、日本語ができるようになっていったら自分はどうなりたいのか、日本語を学ぶことによる自分の理想像などを

カリキュラムやテキスト先行ではなく、子どもを学びの中心にする【Aflevering.36】

 私は日本の公立高等学校の教員を退職し、現在オランダのデンハーグにある日本語教室で、子どもたちの日本語学習のサポートをしております。  日本の現場で感じた、「子どもが置いていかれている」教育のあり方をもう一度見つめ直すために、オランダの教育や社会について学びながら、「教育の本質」について自分なりに考えを深めていきたいと考えています。  教育の本質を考える上で、今回は子どもの成長に関わる「教材」の捉え方について考えたことをまとめておきたいと思います。 教材が中心だった私の現

生徒の不安の中にある「幸せに生きる」ためのヒント【Aflevering.35】

 私の日本語教室の授業では、授業時間や内容に余白を持たせるようにしています。  カリキュラムに縛られて授業を急いでしまうと、子どもたちの学習している様子を観察することができず、細かい変化に気づくことができません。  また、生徒からの意見が出やすいようにリラックスをした雰囲気で授業を受けられるように心がけています。 生徒の無意識の不安に気づく 本音と建前を極端に使い分けないことの大切さをオランダに暮らす人々から学びました。  また、私が高校教員の時から、子どもが身構えてしまう

「もっと学びたい」「ここは私の居場所」と思える日本語教室にするために[34]

 私が日本語教室で授業をする上で、学びや子どもたちをどのように捉えて授業をしているかについてまとめました。日本語サポートの対象者は、小学生から高校生の年齢(一部大学生)までです。授業内容は、年齢相応の日本語力を身につけること、帰国の準備として日本の学校で求められる学習言語を鍛える、日本の高校入試(国語や小論文など)あるいは一部大学生の文章力を鍛えるトレーニングをしています。 学習者と一緒に授業を創るという意識 授業は対話を中心に展開します。私が高校で働いている時から心がけて

日本語教室に初めて来た子どもとの関わり【Aflevering.29】

少人数学習のまとめ 以前は「少人数学習」について私の考えをまとめました。  海外で子どもが日本語を学ぶ場合、日本語を使う場面そのものが限られていることが多いと思います。  また、日常生活の中で日本語にどれだけ触れる機会があるのかの違いによって、同じ年齢であっても日本語の理解力には差があります。これは決して能力の差ではありません。  そのため、指導者はそれぞれの子どもの日本語に関するスキルを把握する必要があります。  また、子ども同士の会話を活発に行うことで、日本語学習に対する

子どもの「ナナメの関係」として、保護者の不安にも寄り添いたい【Aflevering.26】

 オランダのデン・ハーグにある日本語教室で小学生から高校生までを対象に、週に1回90分で授業をしております。  オランダ語や英語など、現地の言葉が強い中で、日本語を維持すること自体とてもハードなことです。しかし、家庭だけではなかなか難しい「教科の学習言語」を中心に日本語力を伸ばすサポートをしております。 保護者の方からは、 「日本にいる祖父母と話して、『日本語で話すのが上手になったね』と褒められて子どもが嬉しそうだった」という声や、 「自分の名前を漢字で書けるようになって

異年齢のつながりを作る屋外の日本語教室「あおぞら教室」【Aflevering.25】

 今回は、子どもたちの交流の場づくりとして教室外で活動する「あおぞら教室」について紹介したいと思います。  「あおぞら教室」とは、日本語を使う機会が限られている子どもたちに集まってもらい、レクリエーションやミニゲーム、日本の小学校の体育で行われているような活動をする場所です。子どもたちは、日頃学校で英語や現地の言語を使って生活していることが多いため、日本語を話す異年齢の子どもたちが集まり、外で体を動かしながら日本語でのつながりを感じる場を提供したいと思って活動を始めました。