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あなたの悩みには深い意味がある!【ユング心理学】で解き明かします!

こんにちは、野口嘉則です。

生きてると、問題にぶつかったり、悩みが生じたりすることってありますよね。人間関係の問題とか、子育ての悩みとか、仕事上の困りごととか。
実は、それらの問題や悩みには、深い意味があるんです。それらは、生じるべくして生じているんです。

それをどう読み解けばいいのか、そしてそれらの問題や悩みから、どうやって恩恵を受け取ればいいのか
今回はそのことを、深層心理学の視点から解き明かします。



<無意識は意識をおぎなう>


悩みを深層心理学の視点から見るために、まず【無意識】というものについて話をしたいと思います。
無意識っていうのは、僕たちのこころの中でも、自分では自覚できないエリアのことです。潜在意識と言ってもいいですね。

この無意識・潜在意識は、意識をおぎなう働きをします。そしてこの、無意識が意識をおぎなう働きのことを【無意識の補償作用】と言います。

ケースを一つ紹介しますね。

ある男性が、ある時期から急に首のあたりが硬くなってきて、首が回りにくくなりました。

すぐに病院に行って検査をしましたが、体のどこにもまったく異常はありませんでした。そこで、これは心理的要因だろうということで心理療法を受けました。

心理療法の中で彼はこんなことを語りました。
「実は、すこし前に妻が多額の借金をしていたということが発覚しました。もう僕はどうしたらいいかわからないんです」

この男性は、まさに借金で首が回らない状態になったときに、自分の首も回らなくなったのです。こんなふうに、言葉どおりの症状が体に出るケースは珍しくありません。

別の例も挙げておきますと、ある人が、ある時期から急に食べ物をうまく飲み込めなくなりました。嚥下障害というやつです。
病院の検査では異常なしの結果だったため、この人も心理療法を受けました。
この人は個人で事業をやっていたのですが、取引先からどうしても飲めない要求をつきつけられて葛藤をかかえていたことがわかりました。
つまり、「そんな要求は飲めない」という思いを抱える状況になったときから、食べ物もうまく飲みこめなくなっていたのです。

「首が回らない」とか、「そんな要求は飲めない」とか、そういった慣用表現というのは、心がどんな状態になるとどんな身体症状があらわれやすいかっていう、先人たちの経験的知識の中から生まれたのかもしれませんね。
実際に、心理療法の本には、そういう言葉どおりりの症状が身体に出てきたケースがたくさん紹介されています。

上記のケースには続きがあります。

その男性は、奥さんの借金を知って混乱していたものの、奥さんに文句を言うことができず、葛藤していました。
彼は、心理療法をうけた後、奥さんに自分の抑えつけていた気持ちを伝えました。そしてそのうえで、奥さんと建設的な対話をかさねていきました。そうやって夫婦でいっしょに解決方法を考えていくうち、症状は完治したのです。

このケースでは、首が回らないっていう症状をこの男性が意識して作ったわけじゃないですよね。この症状を作ったのは、この男性の無意識です。

彼の無意識が、首が回らないという症状を作りだすことで、心の底に強い葛藤がおさえこまれているよって教えてくれたんですね。つまり、葛藤をちゃんと扱って外に出したほうがいいんじゃないの、妻とちゃん向きあうことが大事なんじゃないの、っていうことを無意識が気づかせてくれたわけです。

意識が気づいていないことを無意識が気づかせてくれる。これが【無意識は意識をおぎなう働きをする】ということです。


<ミッドライフクライシス(ミドルエイジクライシス)>


ここで、深層心理学の中でも、僕が特に大好きなユング心理学の話をしたいと思います。

心理学者のユング博士は「人生には前半と後半がある。そして、人生の前半から後半に転換する時期に、価値観の大転換をもとめられるような大きな問題が起きることが多い」と、言っています。

その場しのぎの対処法ではどうにもならないような問題が起きる。つまり、自分自身の根本的なありかたを見つめなおさざるを得ないような問題が起きることが多いということです。これを「ミッドライフクライシス」とか「ミドルエイジクライシス」といいます。

ユング博士いわく、人生の前半の課題は、自分の価値観をさだめて、その価値観にそった人生を実現していくということです。だけど、その自分がさだめた価値観というのは実はまだまだ一面的なものなんです。

そこで、人生のなかばには、それまで大切にしてきた一面的な価値観だけでは乗りきれないような問題が起きてくるというわけです。それをきっかけにして、人生後半は、より多面的で深みのある成熟した自分になっていくのです。
これが【自己実現】です。

こちらも具体的な例を見てみましょう。

ある男性は、若いころから「自分は強く生きるんだ。常にポジティブに、前だけ向いて生きていくぞ」という価値観をさだめました。

そして、実際にその価値観を体現するべく強くポジティブに生き、事業でも大成功しました。業界内では誰もが知っていて、多くの人から尊敬されるような成功者になれたんですね。

しかし、そんな彼にも、人生の半ばにおおきな悩みが生じました。それは、奥さんのうつ病と子どもの不登校です。この悩みは、彼のこれまでの価値観である「強くあれ」「ポジティブに生きよ」という言葉では、解決できないどころかむしろ逆効果でした。結果、奥さんや子どもを追いこんでしまうことになりました。

この男性は、人生前半で決めた「強く前向きに生きる」という価値観を体現し、目標を次々と達成していきました。

だけど彼は、「強く、ポジティブに、前向きに」という価値観で生きてきたことで、自分の中の悲しみや不安などの感情を抑えこんできたのです。
そのため彼は、家族が落ちこんでいるときに寄り添えなかったのです。自分の中の悲しみや不安を抑え込んでいるので、家族の悲しみや不安に共感できなかったわけです。

この男性にとって、奥さんがうつ病になり子どもが不登校になったことは、それまでの人生前半の価値観では太刀打ちできない問題、まさにミッドライフクライシスだったのです。

彼は、このミッドライフクライシスをきっかけに、自分と向きあいはじめました。人生前半で切り捨ててきたもの、つまり、自分の中の弱さ・悲しみ・不安などを、一つひとつ認めては受容していきました。これが【自己受容】です。

例えば、過去のことを振りかえって、「自分では悲しくない悲しくないって言ってたけど、あれ本当は悲しかったな」とか。「あのとき自分は平気な顔をしてがんばってたけど、本当は傷ついていたよな」とか。そういう自分の抑圧した感情を受容していったわけです。
また彼は、現在の自分が感じている悲しみや不安などの感情も、認めて受容していきました。

その結果、この男性は、弱ってる人の気持ちに共感できるようになりました。家族の悩みにも寄りそえるようになったのです。
つまり、悩んでいる家族を変えようとするんじゃなくて、悩んでいるありのままを受容できるようになったわけです。

これって、人間としてすごい成長・成熟ですよね。それまでの人生で抑圧してきた部分、自分の中の弱さ・悲しみ・不安なんかを統合して、より厚みと深みのある、複眼的な人間になれたわけです。これがまさしく自己実現です。


<シャドーの肩代わり>


ここまでの話でもおわかりのように、僕たちは、自分にとって好ましくないと思える感情や欲求や性質を、抑え込んだり、ごまかしたり、感じないふりをしたりします。

これは一体どこに抑えこまれるかというと、無意識の領域です。つまり、自分の中にはそれは存在しない、と思えるぐらいまで抑えこんじゃうということです。無意識の中にあるものは、もう自覚できませんからね。

そして、その無意識の中に抑えこまれたものを【シャドー】と呼びます。日本語でいえば【影】です。
抑えこんだ感情は消えたわけじゃないんです。無意識下に場所をうつしただけであり、それがシャドーです。

そしてシャドーっていうのは、無意識下から悪さをしてきます。
例えば悲しみの感情を抑えこんでいる人の場合、目の前に悲しんでる人がいると、「いつまで悲しんでんだ」とイライラしたり、その人を変えたくなっちゃう、つまりむりやり元気づけたくなっちゃうんです。
これはつまり、その人のシャドーが無意識下からわるさをしてきてるわけです。

そしてシャドーは、ずっと抑えこんでいると肥大化していきます。
さらには、シャドーを抑圧しつづけて肥大化させると、家族の誰かが自分にかわってそのシャドーを表に出す役割を担うことがあるんです。これを、シャドーの肩代わりといいます。

心理学者の河合隼雄先生は、教育者や医者など、社会的ステータスが高く、周りから立派だと思われてる人の子どもに、問題行動を起こす子どもが多いことを指摘しています。これがまさに、シャドーの肩代わりです。

つまり、親が立派な人を演じつづけなきゃいけない場合、どうしても自分の中のネガティブな感情や葛藤を抑圧しつづけることになっちゃうわけです。そうして親がシャドーを肥大化させたままだと、その子どもが親の代わりにネガティブな感情や葛藤を表にだす役割をひきうけて、問題行動を起こしたりすることがあるということなんです。

このシャドーの肩代わりは、組織の中で起きることもあります。

たとえば、「やればできる! 我々に不可能などない!」といつも言っている超ポジティブ型の経営者の場合、恐れや不安を抑圧しシャドー化させていることがあります。そのようなケースでは、恐れや不安を表にだす肩代わり役の人が現れるわけです。経営幹部のだれかが、リスク回避を重視する超慎重派になってブレーキ役を担ったりします。

だけど中小企業の場合は、ワンマン社長にが周りにイエスマンばかりを置いて、ブレーキ役の幹部を排除することがあります。あるいは、社長の方針に反対できない空気ができていたりすることもあります。そうなると、やがて大きなミスを連発する社員があらわれたり、社内で不祥事がつづいたり、あるいは社長の奥さんがうつ病になったり、子どもが引きこもりになったりして、誰かが社長のブレーキ役になったりします。つまり、社長のシャドーを表出する役を、だれかが担うわけです。


<自己実現のプロセス>


そんなふうに、シャドーを自分で統合せずに、誰かに肩代わりさせてしまう場合、あまり健全ではない形になってしまうことが多いんです。

なので、僕たちは、自分でシャドーに、つまり抑えてきた感情や欲求に気づき、そしてそれを尊重し、大切にしていくといいんです。

たとえば、良くないものとして抑えこんできた感情に気づいて、その感情を受け入れ、丁寧に味わってみるとか。
あるいは、自分がこれまでの人生で見下してきた、軽蔑してきた生き方があるとしたら、そういう生き方をしている人の良さを見つけて、自分に取り入れてみるのもいいですね。

これまで自分が抑えこんできたものに、ふたたび光を当てて、自分の大切な一部として取りこんでいく。あるいは自分がいままで軽蔑してきたものでも、そこにもしかしたら気づいていなかった宝があるかもしれない。そうやって意識して統合していくわけです。

そうすると僕たちは、それまでの一面的な生き方をしていた自分から、より多面的で厚みのある、より深みのある成熟した人間になっていけるわけです。これが【自己実現】です。


<セルフのアレンジメント>


さて、ここで今日一番お伝えしたい【セルフのアレンジメント】という話をしたいと思います。

まず、自分の定めた価値観を実現させていくのが、人生前半のテーマでしたよね。でも、人生前半で定める価値観っていうのは一面的です。その一面的な意識をおぎなうのが無意識でしたね。

そしてユング心理学では、意識と無意識の両方あわせた自分全体の中心を【セルフ】と呼びます。

意識は自分なりの価値観を形成します。そして、良いタイミングになるとセルフが働き、その一面的な価値観をおぎなうべく、ミッドライフクライシスを起こすというわけなんです。
つまり、より成熟した人間になれるよう、きっかけとなる問題を作りだすのがセルフの働きです。「人生で起きてくる大きな問題や悩みはセルフがアレンジしたものだ」ということです。

例をいくつか紹介しますね。

ある人は、事業を始めてとてもうまくいっていました。

ところが、さらに事業をのばしていけそうな絶好な機会がやってきたときに、なぜかそのタイミングでうつ病になりました。この人にとっては、一番起きて欲しくないことが起きて欲しくない時期に起きちゃったわけです。

そしてこの人は、カウンセリングを受け自分自身に向き合う中で、いろいろなことに気づきました。

「自分は仕事中心の価値観になんの疑問もいだくことなく生きてきたんだな」ということ。「自分は競争の中で勝ちあがることだけを優先して生きてきたんだな」ということ。そして、「その過程で大切なものをいろいろと犠牲にしたり、失ったりしたんだな」ということ。

そうしてこの人は、これまで切り捨ててきたものを見なおして、仕事だけじゃない人生、競争に勝つことだけが大事ではない人生をあゆみはじめました。まさにこれが自己実現です。

そして自己実現を進めながらこの人が心から思ったことは、「あの時期にうつ病になってよかった」でした。
「あの時期にうつ病にならなかったら、自分は目の前のチャンスに、自分のすべてをかけて前進していただろう。あのタイミングでさらに全力で前進していたら、そこから方向転換するのがもっと難しくなっていただろう」としみじみ思ったのです。

他には、子どもが不登校という悩みをかかえていたお母さんの例もあります。

ある有名企業につとめる女性が、子どものことで悩んでいました。

彼女自身は子どもの頃からずっと優等生で生きてきて、親になった今もバリバリ働いていました。ところが、自分の子どもが受験をひかえた大事な時期に、学校に行けなくなってしまったんです。いろいろ手を尽くしてみたけど効果がない。受験の日程がせまりくる中、子どもは学校に行く気配もなく、彼女は親としてもがき苦しみました。

けれども彼女は、カウンセリングを受けて、親としての自分のありかた、さらには夫婦としてのありかた、家族としてのありかたを見つめなおしました。

そこで気づいたのは、学校に復帰することが正解であるという、そんな一方的な価値観しか持っていなかったことでした。しかもそれを子どもに押しつけて、子どもの心をひどく傷つけてしまっていたことにも気づきました。
そして親である自分自身が、「学校は行くべきである」という社会通念や、「受験競争で勝たないと明るい将来はない」といった古くて融通の利かない価値観に縛られていて、自由なものの見方がまったくできていなかったという気づきもありました。

彼女は、子どもの気持ちにも心から耳をかたむけるようになり、夫とも真正面から向きあうようになりました。
そして社会常識とか、社会通念のようなものに縛られない形で、子どもの今後の選択肢を家族でいっしょに探していくことにしました。

このケースでは、ご夫婦そろって「子どもが不登校になってくれて本当によかった!その恩恵があまりにも大きかった」とおっしゃいました。さらに奥さんは、「自分でも感動するぐらい素敵な家族になったけど、これは子どもが不登校になってくれなければ絶対に手に入らなかった」ともおっしゃいました。

人生においては、「ちょっと待って! この時期にこんな問題が起きてもらっちゃ困るんだよ。勘弁してよ」って悲鳴をあげたくなるような出来事がおきたりする場合もありますが、実は、そのような出来事もセルフがアレンジしてるわけなんです。セルフの視点から見れば、かたよった価値観を修正するために、ベストなことが起きているわけです。

そのことを信じて取りくめば、「このことが起きてよかったな」と後で思えるような、そんな大きな恩恵を得ることができるんです。


<まとめ>


あなたの悩みには、深い意味があるというお話をしましたが、いかがでしたか? 僕たちの人生にある、まだまだ気づいていない宝を、おたがいたくさん見つけていけるといいですよね。

<まとめ>
・無意識が意識の盲点にきづかせてくれる
・人生の前半は価値観を定めて実現を目指す
・ミッドライフクライシスという転換期
・悩みや問題はセルフがアレンジしている
・多面的で厚みのある人間になっていくのが自己実現

僕のnoteでは、読めば読むほど「自己肯定感が高まり」「人間理解が深まり」「人間力が養われる」コンテンツをお届けしています。

これからも確実に自己実現へ向けて進みたい方、ぜひフォローをしてたくさんのヒントを受けとってくださいね!

次回は、「僕たちのこころの中にあって、僕たちを駆りたててくるもの。その正体と緩め方」についてお話をします。
知ると人生が何倍も楽しくなるお話です、ぜひ更新をお楽しみに!


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