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「ねばならない」からの解放、ニュータイプ猟師

年始の初仕事は、狩猟雑誌の取材。岡山県の西粟倉村(にしあわくらそん)に行ってきました。

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村の約95%が森という、ばっちこい林業の村。スギやヒノキが整然と植樹された森は、スケールが違う。びしーーーっとそろったオーケストラみたいだ。フィルハーモニー山脈。

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タフじゃなきゃダメですか?

わたしが会いに行ったのは、そんな大自然の中で狩猟をするハダさん西粟倉・森の学校という材木会社にお勤めだ。30歳と若くして営業部長であり、野山を走るトレイルランナーでもあり、ブロガーでもある。

いろいろお話しを聞いたけど、ざっくり言うと、「楽しい」のと「将来に大切なこと」を両立しちゃおうぜ!っていうベンチャー会社のエース。でもすごいフランクで、押しつけがましさとか一切ない。森のおいしい空気みたいな人だ。

2日間、実猟にくっついて、ドキドキしたこと感動したことあったけど、それは誌面が出たときにお楽しみいただくとして。

個人的に強く印象に残ったのは…

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わなにかかった大きな牡鹿を仕留める最中、ハダさんがずっと「やべぇぇ~」「怖ぇぇ~」を連発してたこと(笑)

ディスってると思うじゃん? 違う、逆だよ。「いいな」って思ったんだ。

狩猟って、伝統もあるし命のやりとりだから「猟師たるものかくあるべし」っていうのが強い世界。戦前から続く、ゴリゴリの男社会だ。タフであるべし、我慢強くあるべし。実際、猟師のみなさんは弱音吐かない人が多いです。っていうか吐く人に会ったことがない。

でも、わたしみたいに「運動神経なし」「根性なし」「生き物としての強さなし」の3ない弱小オンナとしては、中途半端な覚悟のものは去れ!と言われているように感じるときもある。うあぁぁ、こんな自分はフィールドに出る資格ないんだぁぁぁ! すんません、もうこの世から消えます!と、心の中がサンドバッグ状態に(←いや、わたしの周りは超甘やかしてくれる方ばかりなのだが、持病の自虐病がたまに発症する)

実際、土地柄や人によっては、上下左右関係が厳しいところもある。たとえば、新人なのに「猟師」を名乗ると、一部のベテラン猟師さんから「お前が【師】(先生)を名乗るなんで何ごとだ!」と叱られたなんてことは、複数のハンターさんから聞いた。(だから名刺には「猟師」ではなく「狩人」と書いてあった)

だから、ハダさんが「怖ぇぇ~」とか、へなへな笑って怯え丸出しにしながら、それでも工夫して粘って、大きな雄鹿を仕留めたのは新鮮だった。なんだかスッと腹落ちしたんだ。「ああ、素直な気持ちを吐き出していいんだ」って。(とは言え、ハダさんだってトレイルランニングの大会出てるぐらいだ。相当タフなんだけどね)

技術がないなら、邪道と言われようが、獲れる方法で獲ればいい。怖いなら怖いなりにやればいい。自分のやり方で、自分の伸ばしたい方向にアップデートすればいい。

考えてみたら当たり前のことだけど、古い世界の中では勝手に空気を読んで動けないこともある。そういう意味でも、ハダさんのようなベンチャーニュータイプ猟師は、必要な存在なんじゃないか。

またひとつ「自由」が増えた。

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その日の牡鹿はすごく獰猛で、最後まで戦うことを止めようとしなかった。壮絶だった。

奪った命。肉は食べる。皮も使う。あとライターとしてできることは、彼らの生きざまも「人間に転用」させていだくことなんじゃないか。そう思いつつある。


お宿 de カラス布教

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宿泊は、温泉とうまい酒とごはん、センスのいい本や漫画がいっぺんに楽しめるゲストハウス「元湯」にて。

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サブカルも充実。

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そして、睡眠導入剤として無意識に手に取ったマンガの重要人物が、カラスの化身だった。なんという運命!

そっちがそうくるなら・・・

スタッフさんがやさしいのをいいことに、自分がつくっているカラス雑誌「CROW'S」も頼まれてもないのに寄贈してきました。今ごろきっと本棚に並んでいる、はず。

カラス雑誌「CROW'S」の制作費や、虐待サバイバーさんに取材しにいくための交通費として、ありがたく使わせていただきます!!