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【第4話】移住先、決まっちゃいました

◇みかんとタオルと水軍と

 新天地が決まりました、しかも4月頭には引っ越すみたいです。早いと3月末かも。まさかこんなにトントン拍子で移住が決まるとは、当の本人たちも実感がわかないワケで……。

みかん/タオル/村上水軍

 さて、移住先はどこでしょう? このヒントだけで分かった方は、すばらしいインテリジェンスの持ち主だ。ウルトラクイズ出られるかも、センター試験通るかも。

 正解は、愛媛県今治市。(前出の黄色い生き物は市公認の「バリィさん」といって、ゆるキャラ界ではそれなりの地位を確立しているらしい。町中がこいつだらけだ)

 今治のほとんどは四国の大陸で占められているのだが、我々が暮らすことになるのは瀬戸内海にぽっかり浮かんだ「大三島(おおみしま)」という島である。みかんが雑草のように生えていて、今治タオルが投売り状態。小説にもなった海の豪族「村上水軍」の舞台でもある。海流が読めない瀬戸内で、ときに海賊、ときに要人たちのボディーガードを果たしたんだと。なんだか任侠の世界みたいだ。

 島というと離島を思い浮かべがちだが、大三島やその周辺の島は「しまなみ海道」という高速道路みたいな陸路で数珠繋ぎになっていて、広島と愛媛を自由に行き来できる。

 写真の来島海峡大橋は、サイクリスト(自転車愛好家のことをこう呼ぶらしい)の聖地でもあるらしく、最寄の道の駅ではタイヤのチューブを売る自動販売機なんていうのもあった。

 というワケで…

 春からー(春からー) 私たちはー(私たちはー) ここに住みます!!

 卒業式風に斉唱してみました。もうそんな季節だもんね。


◇狩りとモノづくりに寛容な島

 いつかは自給自足に近い生活をしたいと思っていた我々夫婦、そしてド田舎であっても今の仕事(ライターとかカメラマンとか)は続けたいと思っていた私にとって、この界隈は魅力的なエリアでもあった。

■魅力1■ 野生動物の生態系がイイ感じである

 大三島では、トビをよく見かけた。生態系のトップである猛禽類が生息しているということは、そこの生態系はバランスが良いという証明になるらしい。イノシシなど四足の獣たちも、元気だ。ほとんどが猟区だし、狩猟でタンパク質を補給するにはもってこいの環境である。当然ながら魚も旨い。素人でも磯で鯛やイカが釣れるそうだ。

 海に見惚れてたら、犬にファックされた(やり逃げの後姿)

 埼玉ではなかなか見られなかった、ミヤマガラスも普通にいる。カラス愛好家としてはポイント高し。(写真は確かブト)

■魅力2■ モノを作ることに対して、どこか無邪気だ

 島には、見かけによらずコンセプチュアルな美術館がいくつもある。あと「病気の妻を見舞いに来ていてココが気に入ったから」みたいな超個人的な理由で、立派に作っちゃった場所もあったり、「ここをそんなに凝らなくても」というような立地の展望台がものすごく秀逸なデザインだったりして。計画性があるんだかないんだか分からないのが多いけど、「好きだ」「やりたいぜ」って気持ちに素直な感じの空間が多いのだ。

 若者たちが害獣であるイノシシを捌いて、かわいい革製品を作ったりもしている。ここだけ聞くと眉をひそめる人もいるかもしれないが、なかなか手触りもよくオシャレなデザイン。

 『今治タオル 奇跡の復活 ~起死回生のブランド戦略~』(朝日新聞出版)で、必死な佐藤可士和のウラで、(これまた必死なはずなんだが)四国タオル工業組合のトップたちが駄洒落で当時を振り返っているのを見つけるたびに、なんだか憎めないなぁと思ったもんだ。

■魅力3■ 「尾道」が近い

 尾道かっこえー。坂だらけの古い街並みに、木造の建物がフジツボみたいにびっしり。島からここまでは車で50分。そんな土地にクリエイターたちが集まってきているのよ。

 で、空き家を自分たちで改修して、ギャラリーとかお店とか、イベントスペースだとか好きなことに使っちゃってる。有機的すぎてむせかえるようだけど、生きてるなーって感じの創作がむんむんなんだ。

 上から見ると三角形…いや五角形?に見える奇怪な家屋。常に改修&増築が行われているため通称ガウディハウスと呼ばれている町のシンボル。(NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト

 ガウディハウスと並んで、人気なのがゲストハウス「あなごのねどこ」。前回の記事で書いた、『0円で空き家をもらって東京脱出!』(朝日新聞出版)のつるけんたろうさんがデザインを手がけた。ここの内装ユニークすぎ。東京からも信者(?)が訪れる。

 関係ないけどスーパーマーケットのトイレ。ザ・昭和!

 このあたりも似たようなもんだ。ちょっと高円寺と似た匂いがする。

 だんご虫みたいに隅っこが好きな私にとって、居心地がいい空間数多し。きものや骨董も多いし、商店街スキップしちゃったもん。町の中に秘密基地がいっぱいあるような感覚だ。ここがなければ、今治移住にウンといわなかっただろう。

■魅力4■ 町としての機能もそこそこ整っている

 数は少ないけど、スーパーもコンビニも病院も書店もある。あと図書館も!

■魅力5■ 島なのに湿気がない

 島にありがちな湿気がない。波の音もしない。潮の香りがないのはちょっと寂しいけど、大好きなカメラや着物が傷まないのはうれしい。カビも生えないし、ラッキー。

 あとは、「ひとりずもう」をガチな神事でやっちゃう大山祇神社や「伯方の塩」の海水を使ったスーパー銭湯もあったりする。すぐに飽きちゃうかもしれないし、それは分からないけど、味わい深い島だと思う。

 あ、ちなみに我々夫婦、この島はおろか愛媛県にも広島県にも知り合いがいませんでした。縁もゆかりもないっつーヤツです。次回は「そんな人間がどうしてここに住めるようになったのか」を書きたいと思います。やっぱ気になるでしょう、お金とか仕事の話とか。

 ついでに、あれだけ渋っていた自分が決断した理由も。

 ほんじゃーではでは。

                             (続く)

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