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M-1グランプリ 2022 感想・採点メモ

1.カベポスター(634点/8位)

 綺麗な構成で尻上がりに盛り上がっていく大好きなネタです。ABCお笑いグランプリで見たときからマイナーチェンジが施されていましたが、それ以上に演者の2人が乗っていたような気がします。
 トップバッター向きだったかは分かりませんが、カベポスターの丁寧な漫才で幕を開けたのは大会全体が弾みをつけるきっかけになりました。彼らのおかげで今年のM-1も良い大会になったと思います。

個人採点:92+2=94点/4位 ※トップバッターのハンデとして、個人採点に2点上乗せしています。

2.真空ジェシカ(647点/5位)

 昨年に引き続き小気味良くニッチなボケが詰め込まれており、ところどころで爆笑も起こりました。最大値も去年より大きかったと思います。
 ただ、緊張なのかネタ中の演技か分かりかねるところで、川北さんの間がずれていたのが引っかかりました。去年の3回戦でネタ飛ばしたり(今回も飛びかけたと仰っていた)、飄々としているようで実は人間味溢れているところが面白いです。

個人採点:89+1=90点/7位 ※2番手のハンデとして、個人採点に1点上乗せしています。

3.敗者復活⇒オズワルド(639点/7位)

 敗者復活戦ではオズワルドが貫禄を見せていたので、順当に上がってきたと思います。知名度のそれほど高くない中、ミキをまくって2位に食い込んだ令和ロマンも大健闘でした。
 敗者復活戦と同じ明晰夢のネタでしたが、敗者復活でも少し早いと感じていたテンポが更に速かったように思います。ゆっくりと入ってから尻上がりに盛り上がっていくのがオズワルドの真骨頂なので、その良さが少し薄れてしまったのが勿体なかったです。
 生みの苦しみと高まるハードルで、来年から更に厳しい戦いとなっていきますが、唯一無二のスタイルでいつか頂点をつかみ取って欲しいです。

個人採点:89点/8位

4.ロングコートダディ(660点/2位通過)

 マラソンを軸にして、2人の大喜利力が存分に発揮されたネタでした。Wボケで全弾命中させていたのも凄かったです。
 ロングコートダディは掛け合いも面白いので、そういった方向も見たいと思いましたが、コントでも漫才でも毎回違う切り口で楽しいネタを作ってくれるのが嬉しいです。

個人採点:91点/6位

5.さや香(667点/1位通過)

 今まで見たしゃべくり漫才の中でも1,2を争うレベルで面白かったです。分かりやすくて、勢いがあって、どんどん盛り上がってく、これぞ漫才というものが見られた気がします。新山さんのテンションの使い分けが素晴らしく、勢いによる笑いでも静かな笑いでも大爆発を引き起こしていました。
 予選から評判は聞いており楽しみにしていましたが、その期待を遥かに超えるネタでした。今ならからあげ4の面白さも理解できるかもしれません笑

個人採点:97点/1位

6.男性ブランコ(650点/4位)

 繰り返しだったり展開が少し読めてしまったりといったことはありますが、それを補って余りあるほどの表現力でメチャクチャ楽しかったです。浦井さんのやられ方がトムとジェリーのようなコミカルさで、その脇でアタフタしている平井さんとの対比も良かったです。
 ロングコートダディもそうですが、二刀流のならではの表現力・発想が相乗効果で面白さを生み出している気がします。男性ブランコもワードセンスが良いので、そういった良さを活かしたネタも是非見たいです。

個人採点:92点/5位

7.ダイヤモンド(616点/10位)

 3回戦のネタから増えたところがあまり爆発を起こせておらず、平坦に進んでしまった印象を受けました。「もねってやめてよ!」のツッコミも、そのワードの気持ち悪さに対するツッコミにしては強すぎるかなというのが個人的な感想です。
 ダイヤモンドは器用なコンビで、ボケツッコミがはっきりしていなかったり、野澤さんがツッコむネタも面白いです。今回は最下位に終わってしまいましたが、次に決勝まで来たときはもっとのびのびネタが出来ることを楽しみにしています。

個人採点:86点/9位

8.ヨネダ2000(647点/6位)

 カベポスターと並び今年応援していたコンビです。1年間かけて、ヨネダ2000が受け入れられる土壌を作り上げたなぁと感じました。
 今回のネタも世界観というよりはグルーヴ感がピカイチで、緩急が上手くはまったこともありメチャクチャ面白かったです。さや香の方が漫才としての技術で点数は高いですが、息苦しくなるほど笑ったのはこちらでした。
 母親はなんとなく面白さを理解したみたいですが、父親は全く分からなかったらしく、その気持ちも察せます。冨澤さんの「共感の笑いが欲しかった。」というのも確かにと思いました。まだまだ進化していくヨネダ2000が楽しみです。

個人採点:95点/2位

9.キュウ(620点/9位)

 ネタが終わった瞬間、思わず「なんでこれやったんだー!」と叫んでしまいました。ぴろさんのスローテンポながらも分かりにくいボケを清水さんが上手く拾っていくのがキュウの面白さなので、ぴろさんのボケが分かりやすい分清水さんのキャラもハマっていかなかったように感じました。
 準々決勝、準決勝とあのスタイルで相当ウケていたと聞いていたので、そのネタではないことが残念でした。志らくさんが仰っていた通り面白いネタも引き出しもたくさんあります。いろいろな結果が"9"尽くしとなったというエピソードも込みでこれからキュウの受け入れ態勢も広がっていくと思うので、来年を楽しみにしています。

個人採点:85点/10位

10.ウエストランド(659点/3位通過)

 あるなしクイズという軸が生まれ、悪口の対象が世間でもうっすらと不満を感じていそうなものになったおかげか、前回と比べて遥かに見やすく、面白くなっていたと思います。『警察に捕まり始めている!』から一気に引き込まれて、勢いのまま大笑いしました。
 大爆笑を掻っ攫ったということで、3年ぶりのトリからの最終決戦進出となりました。悪口を待つ態勢と3位通過の応援ムードが合わさって、ここから会場を上手く巻き込んだと思います。それにしても小市民怒涛の叫びというキャッチコピーは素晴らしいですね。

個人採点:94点/3位

1stラウンド振り返り

 去年に比べて空気の重さが緩和されたのか、ウケるところとそうでないところのメリハリが良かったです。ニューヨークの屋敷さんも、お客さんが素晴らしいとラジオで仰ってました。前半~中盤に決勝経験組が続いて点数的な山場が来た分、最初から最後までワクワクしながら見れる大会だと思います。
 個人の感想としても、久しぶりに息苦しくなるまで笑えた大会でした。「1.さや香 2.ヨネダ2000 3.カベポスター」の三連単こそ外れましたが、応援しているコンビが高く評価されたことも嬉しかったです。

最終1.ウエストランド(6票:邦子、塙、冨澤、志らく、礼二、松本)

 1stラウンドで手繰り寄せたウエストランドの空気を、最後まで自分たちのものにしたのが勝因かと思います。2つ同じ題材を続けて飽きられなかったのも長いM-1の中ではかなり珍しかったです。
 ネタの中身も全くトーンダウンせず、悪口の切れ味は増していました。ただ、同じ悪口でも別なパターンを観たかった、毒づく対象はこれでいいのかなど気になる部分もあって、結果的には1stの方が点数が高かったです。

個人採点:93点

最終2.ロングコートダディ(0票)

 去年のワニになりたいというネタを彷彿とさせるネタでした。掛け合いが増えて持ち味は活かされたのですが、笑いの量はそこまで増えていかなかった印象です。それでもセンスの良さやほっこり感はピカイチで、見てるだけで楽しいというのはこれぞお笑いだなぁと感じました。

個人採点:91点

最終3.さや香(1票:大吉)

 最初で緊張が伝わってきたので心配でしたが、1stのときと同じく尻上がりに面白くなっていく良い漫才でした。回数に関する謎の計算式や、新山さんがおかしいと気づいてから足掻いて諦めるまでなど、ツッコミなのにくるっているところが面白く、単なる男女の関係ネタよりは1つも2つも上を行っていると思いました。

個人採点:95点

最終決戦振り返り

 自分の中ではさや香が優勝でしたが、会場の空気など考えるとウエストランドの方が強そうには感じていました。実際にウエストランドに6票集まりましたが、王道のしゃべくり漫才を評価する審査員も数人いると思ったので、ここまで大差がついたのは驚きました。

終わりに

 ウエストランド優勝おめでとうございます!井口さんには是非ともアナザーストーリーで泣いてほしいです笑
 準優勝に終わったさや香も、これで準優勝はかなり酷だと思うような素晴らしい出来でした。今までは1stラウンドの貯金で逃げ切る側面がありましたが、ここ3年は1位通過のコンビが優勝を逃しております。最終決戦までネタを温存しつつ勝ち切る、それでいてトーンダウンを感じさせない作戦も重要になるのかもしれません。

  余談ですが1stラウンドの私の採点を総合すると、
・平均:91.3点(自分を含めた8人中3番目に低い)
・点数分布:85~97点(8人中最も広い)
・標準偏差:3.89(8人中最もバラつきが大きい)
・最終成績との相関係数:0.78(8人中6位だが、相関は高い方)
・自分と最も相関の強い審査員:塙さん(0.89)
・自分と最も相関の弱い審査員:
邦子さん(0.28)
となりました。毎年の採点だとだいたい真ん中ぐらいの平均、標準偏差となっていたので、ちょっと意外でした。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。敗者復活戦についても振返っていきますので、もし良ければそちらもよろしくお願いいたします。

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