日記 歯医者は忘れずに、ゴミはゴミ箱へ。

歯医者の予約日を間違えた。
しかも、わざわざ自分から予約変更の電話を入れて、予約日を改めていたのにだ。

予約の時間に、受付に「来たわよ」と言わんばかりに保険証と診察券を提示すると、事務員さんが、あ~……と唸っていた。ここで、その前日が予約日であったことに気付いた。本当にごめんなさい。

事のいきさつは、実にマヌケなものであった。
例の電話をしたあと、すぐさまスマホのスケジュール帳に入力をした。そして帰宅後、自宅のカレンダーにも書き込んだ。
ところがあとから確認しなおすと、スマホとカレンダーで日付が違っている。そしてあろうことか、私の頭はカレンダーの方が正しいと思い込んでしまっていた。なんでそっちを信じたんだろう。手書きの方が記憶に残るからかな。それならいっそスマホを手放して、アナログな生き方をした方がいいのではないか。
受付で謝罪し、その場でさらに予約日を変更した。
今度は診察券にも印字がされているから大丈夫だろう。

もうなんの予定もなかったのだが、ヘマしたのもあってか、なんとなくすぐには帰りたくないような気持ちだった。こういう時は歩くに限る。
この辺には松並木があるので、そこを歩いてみることにした。
その日は曇り気味だった。頭上には松の細い葉が重なり合っていて、空からの光をさらに弱くしていた。立ち並ぶ大木も、その外側にある街並みの風景を遮っていて、別の世界にいるかのような気分だった。

松並木を抜けると、一気に現実に引き戻されたかのような感覚になった。ともかくも、歩を進める。
バス停の横を通り過ぎようとした時、バス待ちをしていた老紳士に急に声をかけられた。私の方を見て、ニコニコしながら「すごいよこれ!」と言っていた。老紳士がどこかを指差している。なんだ?と思いつつ近づいていくと、低いブロック塀の向こう側に、大量のコーヒー缶が投棄されていた。ちゃんとゴミ箱に捨てればいいのに。誰かが一気にそこに捨てただけであろうが、それにしても同じような種類の缶が綺麗に一か所に集まっている。ちょっと一種の芸術っぽい感じだった。
「うわ!すごいですね!」と思ったそのままを口にして、老紳士と笑い合った。他人とこんなくだらないことで笑い合ったのは久しぶりだ。こんな風に、外で知らない誰かと話すのは結構好きな方なのだ。

少しばかりいい気分になったところで、散歩を切り上げることにした。
とにかく、次は忘れずに歯医者に行こう。大人なので……

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