アメジストの魚1-4
ジリジリと時計が鳴る。
午前6時30分。あのまま眠ってしまっていたらしい。テレビもエアコンも点いたままで、乾燥してしまったのか喉が痛い。リモコンを手に取ってエアコンを消してベランダの窓を開けると、薄暗い街から冷たい風が吹いて頬を撫でた。テレビ画面の向こうではアナウンサーが笑顔で手を振っている。
「さむ……。」
こんなに寒いならエアコンを消したのは間違いだったかもしれない。窓を閉じてコーヒーを入れるために台所へ向かう。お湯が沸くのを待ちながら今日見た夢のことを考えた。
夢なんて久しぶりに見たせいか心が妙にざわざわしているのが分かる。彼女は最後に何と言ったんだろう。もう一度眠ったら出てきてくれたりしないだろうか。いや、あるわけないか、彼女はいつだって気まぐれだったからそう簡単に僕のお願いは叶えてはくれない気がする。
お湯が沸く。やかんの口からピーと甲高い音がして火を止める。出来上がったインスタントコーヒーの入ったカップを持ちながらソファに戻る途中で、羽織っていたブランケットが落ちた。拾おうとして、淡いグレーのブランケットに身に覚えのない染みがあるのが見えた。
「何だこれ。こんなとこに…。」
そっと触れてみると少しだけザラザラしている。
お気に入りだから気をつけていたつもりではいたけど、知られないうちに汚れてしまったのかもしれない。これくらいなら使うのに支障はないだろうけどもう一度洗濯しておいた方がいいだろうか。
「……。」
とりあえずブランケットを羽織り直してソファに沈む。ここが一番落ち着くんだよなぁと思いながらちびちびとコーヒーを飲んだ。
テレビは相変わらず同じような話題ばかり繰り返していた。