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アメジストの魚2-1

今年に入って何度目かの診察を終えて、症状の進行を遅らせる為の薬と鎮痛剤を処方された。

「症状は確実に進行しています。このままのペースだと数ヶ月の内には変異が著しくなるかもしれません。」

「そうですか、」

「今はまだ痛みも少ないようですが、念の為鎮痛剤も出しておきます。何か気になることがあればいつでも受診に来てくださいね。」

優しそうな若い先生はそう言って、カルテを置く。またなにか言おうと口が開きかけていたが、それを待たずに席を立った。

「分かりました、ありがとうございます。」
そう遮って診察室を出た。

薬を待つ間、待合室の大きなモニターに流れるドラマの再放送を流し見ていた。ここに流れるのはいつも演出も演技も少し古くて、でもそれが何となく好きで来る度に見ている。正直、数ヶ月に一度の定期的な受診はこれを楽しみに来ていると言っても過言ではない。

1話分見終わった頃に名前を呼ばれた。

「茅尋。」

それは顔見知りの看護師さんでも、気さくに話しかけてくれるお年寄り達でもなくて。紛れもなく、彼女の声だった。