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一言感想文

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400字以内で綴る読書感想文です。
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記事一覧

小林賢太郎「表現を仕事にするということ」一言感想文

舞台や映像の世界で知られる小林賢太郎のnoteから生まれた本。鬱々とした本屋巡りの中で直感的…

伽藍配置「エコーチェンバー 会長・邑崎郁彦の場合」一言感想文

この本はPTA会長の邑崎郁彦の一人語りによって物語が進んでいく。X(旧Twitter)を彷彿とさせ…

増茂悠人・吉田峻「読みながら考える 1号」一言感想文

この本は、「読みながら考える」というPodcast番組のポッドキャスター二人による作品集である…

林柏和「たとえその愛は孤独だとしても」一言感想文

作者は中国福建省出身で、日本語ネイティブではない。しかし、だからこそできる表現がある。日…

吉田修一「森は知っている」一言感想文

吉田修一は、本当に人を描く。詳細な心理描写というよりも、行動で描く。一人でいるときに何を…

西尾維新「鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説」一言感想文

西尾維新(にしおいしん)版「吾輩は猫である」である。むろん、語り手は猫ではないのだが、そ…

雨穴「変な絵」一言感想文

「変な家」で知られる雨穴(うけつ)さんの2022年の作品。さまざまな「変な絵」を手掛かりに、物語が進んでいく。ホラー要素もあるので、ゾッとする表現もあるが、全体的には謎解き要素が強い。ストーリー展開にややホラー要素があるものの、それほどおどろおどろしいわけでもなく、むしろ謎解き部分を抜き出して楽しむこともできる。確かに映像化したら怖そうではあるけれども、全体的には明るい展開もあり、読後感もわるくない。叙述トリック的な要素もあるので、マンガや映像よりも、まずは小説で楽しんだ方が

宮嶋勲「最後はなぜかうまくいくイタリア人」一言感想文

本屋でふと見かけて、直観的に選んだ本である。 イタリアにもイタリア人にも、これといった縁…

朝井リョウ「正欲」一言感想文

何故ある種の「下ネタ」に嫌悪を感じるのか、わかったような気がする。その言動自体というより…

小此木啓吾・河合隼雄「フロイトとユング」一言感想文

フロイトの精神分析の第一人者である小此木啓吾(おこのぎけいご)と、ユング心理学の第一人者…

河合隼雄「河合隼雄自伝 未来への記憶」一言感想文

河合隼雄が『図書』(1998年7月~2000年11月)に連載した原稿がもとになった自伝的エッセイ集…

物江潤『デジタル教育という幻想 GIGAスクール構想の過ち』一言感想文

筆者は話題を変えながらも、同じことを何度も主張している。川上主導の教育改革が、川下の現場…

野口聡一『どう生きるか つらかったときの話をしよう』一言感想文

この本では同じ主張が何度も繰り返されている。その一つが、「評価軸を自分に取り戻す」ことで…

米澤穂信『可燃物』一言感想文

この本は、表題作「可燃物」を含む五編の短編推理小説集だ。群馬県警捜査一課の葛(かつら)警部を主人公に、謎めいた事件の真実が明らかになる。葛の手法は変わっている。部下達にさまざまな証言や証拠を集めさせるが、その目的について、部下達にはよくわからない。しかし、ある程度情報が集まると、一気に真実に辿り着くのだ。読み手は、部下達の気持ちになって、一見関係ないような事実の積み重ねが、驚くべき真実につながっていることを知る。葛を取り巻く周囲の人物も、ステレオタイプな刑事キャラなのだが、ど