『クオモ会見を見ているところをトランプに見つかったメラニアの物語』
これは、Trump Catches Melania Watching Cuomo Briefing(By Andy Borowitz、March 31, 2020)の翻訳の試みです。
作者のAndy Borowitz(1958年生まれ)は、アメリカの作家、コメディアン、風刺家、俳優として有名な人です。ニューヨークタイムズのベストセラー作家で、National Press Clubのユーモア賞をとったこともあります。
ニューヨーカー紙に風刺コラム『The Borowitz Report』を掲載していますが、これもその一つです。
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ドナルド・J・トランプが、妻のメラニアがニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの会見をこっそり見ているところに出くわした後、ホワイトハウスではぎこちない場面が展開した。
ホワイトハウスの情報筋によると、トランプが家族のレジデンシャルエリアの廊下を歩いている時、リンカーン・ベッドルームからおなじみの鼻にかかった声がマスクと人工呼吸器について話している声が聞こえてきた。
部屋に飛び込んだトランプが見つけたのは、クオモをうっとりと見つめている妻だった。
不意をくらって驚いたメラニアはすぐにテレビの電源を切り、クオモがどんなに大きくて、酷い失敗をするかをちょっと見ていただけと言い張った。
彼女の夫は彼女の説明を受け入れたようだったが、ホワイトハウスはこの事件に眉をひそめた。そこでは、何週間もの間、毎日昼頃になると、クオモ知事のCovid-19アップデートを見るために、ファーストレディは消えていたのだった。
先週のことだった。ホワイトハウスのあるスタッフが、メラニア夫人が仄暗い中で、アンドリュー・クオモのちらつく姿だけで照らされているリンカーン・ベッドルームに一人でいるのを見ていた。
ファーストレディは見られていることに気付かず、クオモに「あなたが最高」とつぶやいていた。
=完=
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もう気付かれたと思いますが、これはノンフィクション・レポートでもなんでもありません。ありそうなこと物語を使った風刺です。
表現も、報道記事がよく使う言い回しのパロディになってます。例えば、
"According to White House sources, Trump was walking down a corridor of the Family Residence..."
"Reportedly, last week a White House staffer observed Melania alone in the Lincoln Bedroom..."
こういう表現が記事に出てきたら、賢明な読者諸氏は「ほんまかいな」と思うわけですが、あえてそれを使ってメディアの胡散臭さもチョロっとおちょくってるわけです。
一番重要なのは、こういう風刺文学にしばしば真実が現れるということです。事実の列挙によって、真実を隠蔽するのは簡単なことです。風刺文学は健全な社会に必要不可欠なものです。
明治・大正時代に活躍した奇人、宮武外骨は日本における風刺のの最高峰です。彼の作品をまだ読んだことない方は、アマゾンで手に入るのでオススメです。最も有名なのは『滑稽新聞』でしょう。
1904年(明治三十七)2月に日露戦争が始まり、出版物への検閲制度が厳しくなった頃、報道禁止、発禁、発行されても伏字だらけで何が書かれているのかサッパリわからない状態となりました。これを逆手にとって外骨は次のような伏字だらけの記事でからかいました。
「●秘密外の○○」
「今の○○軍○○事○当○○局○○○者は○○○○つ○ま○ら○ぬ○○事までも秘密○○秘密○○○と○○○いう○○て○○○新聞に○○○書○か○さぬ○○事に○して○○おるから○○○○新聞屋○○は○○○○聴いた○○○事を○○○載せ○○○○られ○○得ず○○して○○丸々○○○づくし○の記事なども○○○○多い○○○
是は○○つまり○○○当局者の○○○○○尻の○○穴の○○狭い○はなしで度胸
が○○○無さ○○○過ぎる○○○○様○○○○だ
我輩○○が○○○思う○○○には○○○○○軍○は○○元来○○○野蛮○○○○な○○○○○事で○○○○○○あるから○○その○○○軍備○○○を○○○秘密○○にし○○○○て○○○敵○○○○の○○○○不意○○を○○○うつ○○○○の○○も○○○あな○○○○がち○○とがむ○○○べき○○○事○○では○・」
(同新聞第69号、明治37年3月23日付)
解読をお楽しみ下さい(笑)。
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