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【詩】うみ

寄せては返す波の音
夜のしじまに繰り返され
ガラス窓の向こうの
海の気配の濃厚さだけで
圧倒されてしまう

ちっぽけな私の
そのちっぽけさを
痛感している
噛み締めている

風の音と混じり合い
波は岩場や砂粒に当たって
幾千の衝撃音を発生させ
それはひとつの
波音の集合体となって
私に押し寄せてくる

身体中が耳という
器官になってしまった
肌で
細胞の一つひとつで
轟々という波音を
聴いている

身体にぶつかると
集合体の波音は
千々にほどけて微分され
いつか見た砂粒たちの記憶を
淡く再生して消えていく

私はただそれに
圧倒されているだけ
なすすべもなく
地球の
宇宙の
神秘と広大さに
震えているだけ

もうすぐやってくる明け方
密やかに更新されていく1日
ほら海の上は
あんなにも空が広がっている

朝が来れば
せせこましく生きる
半径2メートル程度の近視眼に
突然告げ知らされる
360度のパノラマ

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