【小説】インクルージョン〜内包されたもの〜2
私が原因不明の不調に悩まされるようになったのは、1年ほど前のことだ。私の仕事は、専門知識を必要とするような難しい作業ではない。替えのいくらでもきく、お店のカウンターに立つ仕事だったのだけれど、誰にでもできそうなその仕事がどうにも難しくなってしまった。
いくつかの路線が乗り入れる大きなターミナル駅のビルに入っているその店は、場所柄もあってお客がひっきりなしにやってきた。忙しい日にはレジの前に列ができることもあり、私は何も考えずに目の前の作業に集中して、次から次にやってくる