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読書感想文

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読んだ本や文章の感想を書いたものです。
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#社会

『みな、やっとの思いで坂をのぼる』(永野三智 著 ころから株式会社 2018)読書感想文

今回は『みな、やっとの思いで坂をのぼる』という本を紹介したい。この本には副題がある。「水俣病患者相談のいま」だ。そう、この本には、水俣病の“今”が描かれている。 著者である永野三智氏は水俣で生まれ育ったが、水俣病のある生活から目を背けるために別の土地へ逃げ移った過去を持つ。水俣病患者の知人に心無い言葉をかけてしまった経験も持つ。しかし、恩師が関わる水俣病訴訟をきっかけに、改めて、水俣病と向き合い、現在は財団法人 相思社の水俣病相談窓口を担当されている。その法人は坂の上にある

『「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス』(戸田山和久 著 NHK出版 2011)読書感想文

タイトルにもある「科学的思考」つまり「科学的に考えること」は「科学リテラシー」とも言い換えられるものだ。科学と社会が切り離せない現代においては、誰もが身に付けておいた方が良いものとして、ところどころで取り上げられる。 この本は東日本大震災の数か月後に出版された本だ。当時は科学(者)からの情報発信が問題視され、科学への信頼を大きく損ねた時期でもある。同時に、科学(者)からの情報発信を社会(市民)はどう受け取るのかも問題になった時期でもある。 最近は新型コロナウイルス感染症の

『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』(三井誠 著 光文社 2019)読書感想文

コロナウイルス感染症の感染者がずいぶんと減ってきている。行動制限も緩和の方向に動いている。振り返えれば、コロナウイルス感染症に関する科学者側からの発信に不信感が募った時期もあった。科学技術が発展し、社会に浸透している現代においても、科学は不信がられる存在であり続けている。 この本は、アメリカにおける科学不信の現場について描かれているルポルタージュだ。 アメリカではキリスト教信仰の関係で、ダーウィンの進化論を教えない学校もあるそうだ。科学の視点で見れば常識だとされることを常