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読書感想文

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読んだ本や文章の感想を書いたものです。
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#研究

『なぜ科学者は平気でウソをつくのか』(小谷太郎 著 フォレスト出版 2021)読書感想文

今のところ、研究の世界は捏造などの研究不正(ウソ)と縁を切れていない。世間を騒がすような研究不正も登場する。そのような研究不正は元々、研究業界やマスコミを歓喜させる大発見だった。 本書は、常温核融合やSTAP細胞などの科学史に刻まれた研究不正について書かれた新書である。 研究不正は一時、大発見として取り沙汰されてしまう。しかしながら、後々、論文内の不可解な記述や追試の失敗などにより、各所から疑念が浮かび上がり、ウソであることが暴かれてしまう。 本書では、大発見として発表

『理系女性の人生設計ガイド』(大隅典子・大島まり・山本佳世子 著 講談社 2021)読書感想文

この本のタイトルおよび著者を見ると、「理系女性による理系女性のための本」という印象を持つ。メインターゲットは理系の女子学生や女性研究者なのだろうが、男性が読んでも学びが多い。それは、扱っている人生設計やキャリアアップというテーマが、男女双方に関わるものだからである。 この本は以下のような3部構成になっている。 第I部 先輩理系女性たちが歩んできた道 第II部 大学で、企業で。理系女性のさまざまな活躍の場所 第III部 2人の教授が現在・未来の理系女性を語る 第I部で

『探求する精神』(大栗博司 著 幻冬舎 2021)読書感想文

大栗博司氏の著書は、『強い力と弱い力』や『大栗先生の超弦理論入門』など、これまでにも何冊か読んだことがあった。その度にいつも「なるほどなぁ」と学びながら、「学界をリードする研究者であり、かつ、こんな文章を書けるなんて、スーパーマンだな」などと思っていた。そんな大栗氏の新刊ということで、本書を手に取った。 本書は、大栗氏が半生を振り返りながら、研究や科学、大学や教育などについて自身の考えを記したものである。なので本書は大栗氏の回顧録のようなものでもある。バリバリ現役の彼がなぜ