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デートでアベンジャーズを見た後に私たちは塾講師と生徒になる

映画を見た後のカップルといえばどんな姿を思い浮かべるでしょうか。

手をつないで2人の距離が近いカップルや、「この後どうする?」なんて甘い会話をしているカップルを思い浮かべるでしょうか。

そんなカップル達の横で、私たちは質問攻めする生徒と、熱心に解説する塾講師になるのです。

後に夫となる彼とは、映画館にレイトショーを見に行くというデートが定番になっていました。

なぜかというと2人とも仕事人間だったので、休みの日は家でダラダラしたかったからです。

でもデートも定期的にしたいという願望を叶えたのが、仕事終わりに月に1回から2回行くレイトショーだったのです。


待ち合わせはショッピングモールの中にある映画館の入り口でした。

同じ職場で働いていたのですが、待ち合わせすると照れくさくなるんですよね。

きっと薄暗くて静かな雰囲気のせいです。

彼がいつもよりカッコよく見えるのも雰囲気のせいです。みんな映画館のせい。


さて、どんな映画を見るのかというと、ほとんど激しい系のものです。

敵とか味方とかがいて、ドーンとかバーンとかなるやつです。

これは、

「映画館の大きなスクリーンで見るなら激しい映画が一番だ!」

という、彼の熱弁に毎回負けるてしまうからです。

また、彼は仕事人間なので、激しい映画で非日常に浸ることがストレス解消になるらしいのです。

フランス映画のようなゆったりとした映画は途中で飽きるし、

素敵な風景を眺めているシーンやただご飯を食べているシーンを見ると、

「なんの意味があるのか」

と思ってしまうらしいのです。

「意味なんてなくていいんだよ!意味がないのがただ美しいんだよ!」

と分かるようで分からないことを私は言いたいので、フランス映画のようなのんびりとした映画は1人で見に行くと決めています。

いざ、激しい映画を見始めると、私はあっという間に物語迷子になりました。

アベンジャーズを見た時なんて完全に迷子になりました。

登場人物は多いし、誰が敵なのか味方なのか、今なんで戦っているのか分からなくなるのです。

ハリーポッターみたいに仲良し3人がいつも一緒にいるわけじゃないし、悪そうな人が悪そうじゃないんですよ。

そんなしょうもない言い訳をしながら見続けていると、どんどん頭の上に「?」が増えていきます。

次回作に繋がるであろう意味深なラストシーンも、ストーリーを把握している彼は

「うあぁ!たのしみぃ!」

と言っているのに、私は

「どういうこと?」

しか出てこないのです。ストレスを解消しに来たはずのに、ストレスを抱えてしまいました。

そんな映画の全てを理解している彼に対して、なにも分かっていない私は映画が終わるとすぐに、

「あれはどういう意味?なんであそこで戦ったの?なんで強くなったの?」

と、『なんで攻撃』を仕掛けます。

その攻撃は最寄りの駅についても、電車に乗っても続きます。

何を隠そう、私は「なんで空は青いの?」と質問するような子どもだったからです。

私の『なんで攻撃』に対して父と母は

「後で調べておくね」

という防御でさらりと攻撃をかわしていました。

子どもとしては質問に答えてもらえない寂しさを感じていたのですが、

大人になった今それはしょうがないと思えるのです。

だって、仕事終わりや家事終わりの子どもからの『なんで攻撃』はしんどいんです。

そんな寂しい思いをした私でさえも余裕がない時は子どもの『なんで攻撃』に

「知らない!よく分からない!」

と言ってしまいます。そんなもんです。

では彼はどうしたのかというと、私の『なんで攻撃』に対して徹底的に説明するという対応をしてきたのです。

大学生の頃に塾講師のバイトを選ぶくらい教えることが得意な彼にとって、質問に答えることは簡単でした。

手をつないでニコニコし合うカップルの横で、

私たちは勝手にやる気スイッチが入った生徒と熱心な塾講師になっていました。


色気なんてものはありません。

でも、その時間が最高に楽しかったのです。

子どもの頃に疑問に答えてもらないというストレスと、映画が理解できないストレスが一気に解消されているようでした。

また「なんで?」ばかり言う子どもに戻れるレイトショーに行きたくなってきました。


#映画にまつわる思い出

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