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東大を出たけれど66「招かれざる客」

 その甲高い声の中年は、不遜な態度でこう言った。
「安い店だな。メンバー、差し馬しようや、差し馬!」
 近所にある競合店の常連なのである。10年前の当時は珍しくもなかったが、そちらは200円の台を謳っていたため、半分のレートのうちでは物足りなかったのだろう。この客が河岸を変えてみたのは、全くの気紛れだったのだと思う。
「メンバーの誰でもいいから!ほら!」
「じゃあ――、彼がやりますわ」
 その面倒な来客に対し、店長が私を指して言ったのである。当時はメンバーも常連客と見境なく握っていたので、このときも、はあ、と当たり前のように返事をして座った。

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