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デザインセンスの正体に関する考察

「デザインセンスの正体」と検索してみるといろんな方が様々な解釈を述べていますが、自分は、デザインセンスというものは存在する。と考えています。結論から先に述べると下記のように言語化しています。

デザインセンスとは、頭の中で『情報の取捨選択』と『情報の組み合わせ』を行うときに使っている個人好みによって発生する現象のこと。(好みは、体験や経験の蓄積によって作られる。)

また、このように定義することで、デサインセンスは後天的に伸ばすことのできる能力であるということもわかってきます。(自身はUIデザイナーとして表現領域に携わっていますが、これはどのものづくりにも共通している考え方だと思います。)


デザイン行為におけるイメージの役割

そもそもデザインにおいてビジュアル表現を行うとは、どんなモノなのか、プロセスの全体像を探ってみたいと思います。

JIDAの書籍によると、代表的なデザインプロセスの理論には、らせん構造やフィードバックループのような、いくつかの過程を繰り返しながら最終的なデザイン解へ進んでいくモデルが多く見られます。その流れの中では、発想すること、発想したものを表現すること、そして表現したものを検討、評価し次の発想につなげていくといったサイクルが見られるといいます。

イメージすることは、このサイクルの中で発想する段階で行われますが、イメージを形成する際にはその源となるものが必要であり、それは記憶や知識、認知などであるとされています。

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引用元:『[PRODUCT DESIGN[プロダクトデザイン] 商品開発に関わるすべての人へ]』P.129

ここに自分なりの解釈を加えるとWebやアプリの場合、この『発想→デザイン解』のプロセスの手前には、戦略や要件、構造の構築が既に行われていることが多く、これがUIデザインのビジュアル表現においては、発想の材料や手がかりとなります。

『戦略』『要件』『構造』 = 発想(イメージ形成)の材料や手がかり


イメージ形成の手がかり

先述の通りイメージ形成には、材料や手がかりが必要です。知識や記憶はその材料となるため、できるだけ豊富な知識や経験を蓄えることが有効とされています。

発想支援や造形理論の分野で、イメージを組み立てる手がかりとして様々な方法が提案されています。たとえば、本来小さいことが望ましい性質をあえて大きくしてみるなどの思考方法の転換や、他の事物からの連想、造形的な要素を分解して再構成するなどの実際的な方法などがあります。

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また、発想の原理としては、アメリカの実業家ジェームス・W・ヤングによる有名な本があります。この書籍では、アイデアが作り出される方法、アイデアの源泉にある原理の解説が行われています。書籍からその原理を引用します。

❶ アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
❷ 既存の新しい要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい

原理❶の通り、アイデアを膨らませる(組み合わせの元となるインスピレーションを収集する)ために大量のインプットを行います。インプットには、知識や過去の経験として蓄積された記憶、新たにリサーチする内容が使われます。
そして原理❷の通り、インプットした情報を様々な観点から組み合わせてアウトプットに繋げていきます。

この2点、個人的にはポイントかなと考えています。そしてここがデザイナーとしての個性が現れてくる分岐点だと考えています。

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デザイナーの個性が現れる分岐点

大量のインプットと組み合わせの過程で行われる 『情報の取捨選択』『情報の組み合わせ方』 に使われる知識は、基礎知識や経験、デザイン言語(デザインボキャブラリー)による補強ももちろんありますが、別軸としてどうしても個人の好みが若干混じります。その若干混じってしまう部分に個性が現れると考えました。

複数人で同じお題をやっても全く同じにならない分岐点は、軸となるデザイン言語(デザインボキャブラリー)の数や種類と、この無自覚・無意識の情報の取捨選択』情報の組み合わせ方』 の部分の差で生まれているのではないかと個人的には感じています。

世の中には、(特にWebやアプリには)普遍的なデザインガイドラインや原則、法則が存在しますが、基本的には、その普遍をなぞりながら、なぞっているけど、どうしてもはみ出してしまう部分、それがデザイナーとしての個性ではないかと思います。

なので、UIデザイナーとして表現できる部分というのは、本当にほんのちょっとなんだなと思いますが、そこがとても深く、とてもおもしろい領域なんだと思いました。


おわりに

一般的な文脈で語られるデザインセンスには、「クオリティ(手で描ける曲線の美しさやツールの使い方など)」と「『情報の取捨選択』 と 『情報の組み合わせ方』」から現れる個性の話が混じっていると思います。今回は、自分で手を動かす中で見えてきた、後者の方に着目してみました。

UIデザイン、エンジニアリングやマネージメント、組織について考えたことなどを徒然と書いております。リアクションいただけると励みになります!