関東無宿(1963)

鈴木清順監督作品。

任侠映画のパロディか?と考えがちなところだが、『日本侠客伝』一作目は1964年、『昭和残侠伝』一作目は1965年、『人生劇場 飛車角』ですら1963年3月と、まだブームは到来しちゃいないのである(本作の公開は1963年11月)。

つまり清順には、別に任侠映画を茶化す意図はないのだろう。純然たるひねくれ意識のみで、このヘンテコリンな映画を作っているのだと思われる。

それにしても内容が無い。驚くほどに蛇行的な物語は、付き合った果てに何も語らない。スジのうちのどの部分も、テーマを表象するドラマになるのかならないのかの瀬戸際で、毎度自分からUターン。物語を放棄しているというより、物語を流産させつづけていると言った方が近い。

やたらにカッコいい風貌をしているのでついつい誤魔化されそうになってしまうが、この小林旭は何も出来ていないのである。本当にいいところゼロ。親分(殿山泰司!)からはアゴで使われ、舎弟からは軽んじられ、好いた女からは踏んづけられ、好いてくる娘はどっかにフェードアウト、良くわからんタイミングで暴発し、その成果すらアッサリ無に帰す。

ラストカット、独房にぽつねんと座る小林旭は、己の空虚さにとうとう気づいた顔をしている。それは我々も同じ事で、本作の終わりまでを真面目に見て「この映画とうとう何も描かないで終わっちゃったじゃん!」とようやく気づいた我々も、きっと同じ顔をしているのだ。

「空虚」の一義でもって、主人公と観客が、完全にシンクロする映画。よくもまあこんなもんを作る!

伊藤雄之助と小林旭の花札対決のシーンが一番面白かったです。なんせ花札映さないで、差し入れの寿司なんて映してんだもん、大笑いしました。その寿司がシーンのオチ、あるいは最終的な帰着点の一部として伏線回収されるのは、好悪が別れると思うけど(個人的にはチト醒めるかナ)。

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