13日の金曜日(1980)

ショーン・S・カニンガム監督作品。

マグレでも映画は作られる。

言い訳のできぬレベルでジョン・カーペンターの傑作『ハロウィン』の劣化コピーだし(宙吊り死体には呆れた)、ヒロインが1人になってから物凄い勢いで映画が怖くなくなってしまうのも、コレがカニンガムの演出力の限界かとガッカリしてしまうのだが、それでも、見所はある。

実にちょうど良く寂れた田舎町の雰囲気にはそそられるものがあるし、何より、夜のダイナーのシーンなんかを筆頭に、とても良い雨が降っている。

雨が降り始めてからしばらくの間は絶好調で、殺人鬼の見えそで見えなさ加減と、トム・サヴィーニの血みどろ特殊効果、客観なのか殺人鬼視点なのか区別のつかんフラフラしたカメラ(キューちゃんが『シャイニング』で高級に達成した事の激安バージョン!)が、まぐれ当たりとしか言いようのない相乗効果を上げている。

低予算ゆえにやっていると思われる長回しも、ヒロインがコーヒーを淹れながらじりじりしたり、ドアにロープをくくりつけて何とか籠城しようとしたりの場面が、とても良い感じ。映画とは、時間と空間とキャラクターを描くものなのであり、ここでのカニンガムは魅力的にそれらを描けている。

映画のラスト20分、唐突に現れたババアがベラベラと犯行を自白(内容も逆『サイコ』でしかない)、ヒロインとマヌケなスッタモンダをした挙句、オチに至ってはデ・パルマの『キャリー』の引用でしかないと(せめて夢オチを止めろ!)、雨が止んだら奇跡もピタッと止まった、としか言いようのない体たらくを晒すが、それでも、雨が降っている間だけは奇跡が起こっていたのだ。

マグレだろうが何だろうが、本作には無視できぬ数十分の輝きがあった。それだけでも十分な収穫と言えるだろう……本当か?

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