子連れ狼 親の心子の心(1972)
斎藤武市監督作品。
主演・若山富三郎による本シリーズ、私は昔にVHSで鑑賞し、現在はクライテリオンのBlu-rayボックスを所持しているが、見たのは1、2、3、5作目であり、本作と『地獄へ行くぞ! 大五郎』は未見なのであった。
理由は単純、4、6作目の監督は三隅研次ではないからだ。
さらに付け加えると、Blu-rayボックスでシリーズを順に見てゆくと、超傑作である3作目『死に風に向かう乳母車』を見終わった所で深い深い満足に包まれ、「いやーもう満腹っス!」とそこで鑑賞を止めてしまうからなのであった。
しかしそれではいい加減まずいだろうと、本作の収録されたBlu-rayディスクをプレイヤーに突っ込み、このたびの鑑賞と相成った次第。
感想としては、「そりゃあ駄作ではないんだけどねェ」くらいのものだった。
撮影は水準以上。あれッ思ってたより悪くないぞ?と油断していたところに、オープニングクレジットで「撮影・宮川一夫」の文字を確認した瞬間、ゲェーーッ!?と叫んでしまった。完全にリサーチ不足、我が身の不覚。じゃによって画面にストレスはない。
役者とて並みを上回る。ボーボー燃える刀を構えてキメてみせる岸田森。満を持してバカ殿ぶりを炸裂させる小池朝雄。映画巻頭、竹やぶでクルクル回り、ビーチクもバッチリ見せてくれる東三千の奮闘ぶりに至っては、赤点を付けられるはずもない。
若山富三郎と山村聰が会話する、その後景で関山耕司が刀に手をかけるその他の動きをしてシーンにサスペンスを呼び込む、そんな作法など、嗚呼これの半分でも今時のハリウッド雇われ監督がコレを骨身に沁みさせていてくれたらなァ、と溜め息をつくばかりだ。
だが、それでも、しかし、狂った超傑作『死に風に向かう乳母車』を、すべてにおいて再生産しようとしている作だとの感慨は、拭いきれるものではなかった。
映画は監督のものだ。それが例え、ゴッド宮川(私は宮川一夫をこう呼んでいる)を片腕としている時であっても。何なら監督がもっと有能ならば、各シーンにおいて「もっと陰影を濃く!」と叫んだはずだと、そんな妄言を垂れさせるに及んでは。
本作は、私にそう確信させるだけの、それでも楽しい楽しい、しかしやっぱりちょっぴり悔しい、そんな凡作なのであった。
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