按摩と女(1938)

清水宏監督作品。

徳大寺伸のコミカルに誇張された動作、白目をむいて首を鳩みたいにぐりぐりする盲人芝居に、座頭の市っつぁんみたいだなーと思っていたら、省略ギャグとはいえ男子学生連中をボコボコにする描写があって驚愕した。強さまで座頭市じゃねーか。

盲人を主役にする面白さとは何かといったら、それこそ座頭市みたいなハンディキャップヒーローの面白さを除けば、視線劇を成立させぬまま映画を進行させられる事だろうか。

だから成程、宿屋から逃げ出した徳大寺伸と高峰三枝子での極めてスタンダードな「視線の合った切り返し」が劇的な効果を生むわけだ。常人同士であった場合、そこまでこれを避けつづけるのは不自然だし、映画中盤の無言の2人がすれ違うミステリアスな名場面(ソフトフォーカスが良い)なんてものも作る事ができる。

座頭市は大好きだけどこういう真面目な映画で盲人について頭をひねりながら見るのも悪くないなあ、なーんて、そんな具合に感心していたら、ラストのカメラ前進移動で「えッ!?」と思考停止、終わりの文字を見ながら「盲人の主観視点!?」とやっと解釈が追いついて驚きなおした。最後の最後に爆裂弾みたいな無茶演出を出してきよる。

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