007 / オクトパシー(1983)

ジョン・グレン監督作品。

ここまでコンセプトを貫徹してくれるなら文句なし。休日の夜にリラックスしながら見るのに相応しい、大らかでゴージャスなアクションコント観光映画。

クライマックスの列車アクションとカーチェイスを除けば、全編サスペンスのサの字もないユルユル加減で、悪役もぜんぜん怖くないうえに魅力もないのだが、明らかに分かってやってるので許せる。

モンド映画的な浅薄さが見え隠れはするが(インドの描写だけでなくドイツ人の老夫婦まで運転しながらソーセージ食ってるのは呆れた)、ここまでロケにきっちりカネを使ってくれれば、「時代もまだアレだし許してやろうや」と言いたくなる。

出し抜けな三輪タクシーのウィリー走行でフックしてからの、アイディア盛り盛りな市場アクションは、色鮮やかな画面の良さもあって私は『レイダース』より好きだ(というか『レイダース』のあのシーンの汚らしさと面白くなりきらなさは本当に腹が立つ)。

また、さんざコントぶりで緩ませてからの列車アクションは自在なカメラポジションを矢継ぎ早に繰り出してきて驚かされるし、その後のカーチェイスの無駄な高血圧ぶりも良い(悪役でも何でもないドイツのパトカーがバック走行からの180°ターンを披露する!)。

それらが終わった後に、美女軍団が悪漢どもを薙ぎ倒す描写でまたコントに戻ってしまうのはご愛嬌。いきなりユニオンジャック柄の気球(操縦はデズモンド・リュウリン)が出てきて吹き出してしまうし、オーラスのセスナでの戦いがまた無茶スタントマシマシの本気の仕事だから許そうじゃないか。

タイトルロールのオクトパシーを演じるモード・アダムスは、初お目見えで頬がパンパンで「なんじゃこのオバハンは!?」と突っ込みたくなるが、その後はちゃんと綺麗に映そうという意識を感じる。だったら最初もちゃんと撮れと言いたくはなるが。

ロジャー・ムーアはもうだいぶ高田純二。やっぱこの人個人のピークは『死ぬのは奴らだ』でしょうな。

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