クライム・オブ・パッション(1984)

ケン・ラッセル監督作品。

2本見たら即座に嫌気がさしてきそうだが、この1本だけならまあアリかなと思えた。

トッポい顔をしたジョン・ローリンが、アップの長回しでヘラヘラしたしゃべりから、やがて激昂しはじめる、その顔は汗ばみ、ところどころ照明にきらめいている。

体当たりすぎるキャスリン・ターナーは、なんだこれ『スタア誕生』のパロディか?みたいなサイテーな登場の時点で、女優魂でガンギマリになった顔をしている。

そしてアンソニー・パーキンスは、すげえ良い役者なのにこんな役ばっかり手抜きゼロで演じていて、ホンマお化けソラ豆は罪深い事をしよったよなといつも感慨深く、人生の悲哀をビンビンにたぎらせた顔で全力投球の大演説。

これだけ良い顔を揃えれば、そりゃあサマにはなるわけだ。あとは適度に脈絡を無視した無茶苦茶やバカをやれば、カルトムービーの一丁あがりというワケである。

どんなに過激派を気取ったところで性器を丸写しにしたらポリスが劇場にカッ飛んできてフィルムを燃やされるわけで、じゃあ性行為はどう撮るのといったら俳優のアヘ顔演技を映すより他はなく、つまり顔面映画になるのはこれ自明の理と、ケン・ラッセルにも一応の言い分はあり、悪手と決めつけられ一方的に誹られる謂れはないだろう。

これはこれできちんとした顔面映画ということだ。

何より、何のかんの言ったところでラストで大爆笑してしまったので、これはもう私の負けである。デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』やスコセッシの『ケープ・フィアー』の類似シーンを上回ってバカ。もうすごいバカ。バカはバカでもすごいバカには存在価値がある。

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