大学は出たけれど(1929)

小津安二郎監督作品。

70分の映画のうち、フィルム現存はわずか11分のみという事で、ダイジェスト版としか捉えようはないが、それでも小津の映画だなぁと思わせる部分がギュッと詰まっている。

鼻の穴でタバコをふかすというバカ行為に及ぶ高田稔。

サンデー毎日。(思わず「毎日がエブリデイだよ!」と叫ぶインターネット老人会の人)

女給として働き始めた田中絹代が、女給としてのモーションと同じく高田稔にマッチをこすってよこして怒りに火を付けるいう、具象的というか具現的というかにこだわった手つき。

喧嘩する二人への内側からの切り返し。

ざんざ降りの雨。

ぽんと放られる帽子(着地する帽子に対してカットを割る!)。

快晴のもと走り去る汽車。

私が見た田中絹代では、これが最も若い絹代だった。若干20歳の絹代はすごく可憐だが、しかし、なお若い18歳で私を戦慄させる凄惨美を見せた『折鶴お千』の山田五十鈴には敵わない。

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