バッドボーイズ2バッド(2003)

マイケル・ベイ監督作品。

一周回って、マイケル・ベイの最高傑作は本作なのではないかと、そう思えはじめた今日この頃。

アクションシーンがどれもハイテンションかつ超予算で、全編を通じて見た時にエスカレート感覚に欠ける=映画全体がどこかのっぺりとした印象になってしまっているのは、何の大義名分もなくバカ2人が大暴れするには長すぎる147分のランタイムとともに、本作最大の弱点だろう。

だが、ひとたびマイケル・ベイを作家と捉えると、本作はまるで別の様相を見せはじめる。

ベイは元々手抜きとは無縁の作家だが、そんな彼の瞳孔が完全に開きっぱなしになっちゃってるのが本作だ、という気がするのである。マイケル・ベイ上級者、完全な中毒者向けとも言えるが。

本作最大の特徴は、ただでさえグロ好き下ネタ好きのベイのフィルモグラフィーでも限界を突破している、いちいち悪趣味かつ倫理観のない方向に舵を切る細部だろう。

なぜか麻薬取引現場とダブルブッキングしているKKKの集会場での銃撃戦で、尻っぺたの肉を銃弾でえぐり飛ばされるマーティン・ローレンス。

悪党の家にはネズミが巣食い、貯め込んだ紙幣をバリバリかじって繁殖している(正常位でセックスするネズミというギャグまである!)。

悪党どもが運転するバンがカーチェイスの最中、積み荷の死体をボトボト落とし、ウィル・スミスが運転する車がその死体をボコボコ轢き潰すという極悪描写。

必然性をまるで感じない、という突っ込みを余裕でぶっちぎり、何故こんな事をしたいのかがまるで分からないと言わざるをえない。ハリウッドのど真ん中で、この人は一体何をしているんだろう?

また、各シーン内でのやりすぎエスカレート感覚は、きちんと演出できていると思う。

「ローレンスが安置所の死体を調べた途端に、パカッと頭蓋が外れて脳みそが剥き出しになる」のを見て、「この因果の無さすぎる呼吸!」と私は素直に驚愕してしまった。その後の「潜入バレを防ぐ為に救急車でビルの玄関に突っ込む」というのも物凄い感覚、度を超した破壊描写だ。

そして、冒頭で「全編を通じた時のエスカレート感覚に欠ける」と書いたが、ラスト30分は話が別である。

妹を悪党に拉致され、国際問題など知った事かの蛮行を即決するバカ2人。

それだけならともかく、「俺たちも行くぜ水臭えぞ!」と秒でのっかってくるマイアミ市警の皆様(オーバーザ法律すぎる)。

特殊部隊的な完全武装に身を包んだそんなバカどもが、『大脱走』みたいな地下トンネルから悪の豪邸に潜入、そこをバズーカ他で完膚なきまでに吹き飛ばすに及んでは「もう完全に戦争映画になってるじゃん!」と開いた口が塞がらなくなってしまう。

この「刑事映画が戦争映画に進化する」というぶっ飛びぶりは、ベイのフィルモグラフィーでも突出したものがあると思う。

最後に書き加えておくと、映画の中盤、ミスをした部下を撃ち殺す直前のジョルディ・モヤ。

良く見ると片目に涙の跡がある、その姿を映すのに、唐突に小津安二郎ばりの真正面ショットを持ってきており、私は思わず息を飲んでしまった。

このショット構成の切れ味は瞠目モノで、映画の女神様を無理矢理振り向かせてしまうようなこういうラッキーパンチもまた、マイケル・ベイの醍醐味なのだ。ベイをチャカチャカ編集以外に能のない大馬鹿者としか考えない賢しい連中には、この心地良い驚きは分かるまいワッハッハ。

異常な作家を褒めるにあたって、「長所は普段より抑え目だが弱点はよくカバーできている作品」を最高傑作として称揚するのは、はっきり言って侮りのある態度だ。

「弱点は普段以上に剥き出しかもしれないがそんな事どうでも良くなるほど長所が尖っている作品」でもって評価するべきだと、私は思うのである。

だから本作は、私にとって、マイケル・ベイの最高傑作第一候補だ。

ただ、ベイ映画ファンとしては、ヒロインのガブリエル・ユニオンはもっとケバ美しく撮ってほしかったかな。男2人の映画だからと、あえて控え目にしたのかもしれないけれども、そこは残念。

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