マガジンのカバー画像

変貌する東国史を読み解く

6
2021年12月から刊行が始まり、おかげさまで売れ行きも好調な シリーズ『対決の東国史(全7巻)』。刊行前に収録された鼎談を、6回に分けて特別公開いたします。  著者である高橋秀…
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

『対決の東国史』刊行記念鼎談 変貌する東国史を読み解く #3

列島のなかでの位置づけ 木下 特に足利氏や新田氏は、東国だけでなく全国に基盤を持っています。東国史といわず、全国的な広がりになってしまうので、田中さんの『第3巻 足利氏と新田氏』は描くのが大変だったのではないですか。 田中 おっしゃるとおり、新田氏は九州や西国にも一族が展開して足利氏と争ったので、実際には東国に収まらない対決になりましたね。 高橋 そこがたぶん第1〜3巻と、第4〜7巻との差なのではないでしょうか。東国というエリアだけで見られる時代と、そうではない時代と。  

『対決の東国史』刊行記念鼎談 変貌する東国史を読み解く #2

鎌倉政権と足利氏 ―― 東国の四百年を見通しますと、鎌倉という土地がキーワードに挙げられます。鎌倉幕府は、のちの政治体制に影響力があったわけですけれども、次の足利氏に引き継がれていく要素として、どのような影響力があったとお考えですか。 高橋 鎌倉幕府の存在というのは大きいのですが、東国と鎌倉幕府との関係を見ても一色ではないのです。関東の御家人(ごけにん)がみんな鎌倉に住んでいるわけでもないし、将軍に日常的に奉仕しているわけでもない。やはり鎌倉に住んで、将軍の行列に供奉(ぐ

『対決の東国史』刊行記念鼎談 変貌する東国史を読み解く #1

企画のなれそめ ―― 本日はお忙しいところ、シリーズ『対決の東国史』の刊行記念鼎談にお集まりいただきましてありがとうございます。12月(2021年)から、第2巻・3巻同時配本として刊行開始となりましたが、シリーズのなれそめについてお話しします。2017年ころ、『動乱の東国史』(2012~13年刊行)が発売中でしたが、もう少しコンパクトな内容のシリーズを作りたいと考えました。そうしたところ、田中先生から「各巻のテーマを、主要な二つの武家の関係に絞ったら読みやすくなるのではない