見出し画像

1月19日5時のこと。

今日、保育園に迎えに行ったらいつものように「あと5分いい…?」と言われ、外遊びする子どもたちを眺めていた。このへんは高い建物がないから空が広い。
1分。向こうの夕焼けがより濃くなり、グラデーションのはっきりした空が見える。
2分。グラデーションの境目が滲んで、濃い方へ支配されそうになる。
3分。雲の濃さ、夕焼けの濃さが増し、
「ねえ、まだ帰らないの?」と小さな女の子が隣でため息をついてくれる。そうなの、まだ帰りたくないみたいと答えると、おとなのように笑ってくれる。
4分。見ていたはずなのにもう夕焼けの範囲が小さい。
5分。あっという間に空は濃い色に連れていかれた。

「おーい、帰るよー」
声をかけると、「ぼくもう帰るにゃ」と、猫のふりをした息子がハイハイでやってくる。ズボンも足の裏も、いや、全体的に薄汚れている。今日もたくさん遊んだしるし、今日も楽しかったしるしなんだろう。
「あのさ、空がすごかったよ」
賑やかで安心する騒々しさのなかでそう言ってみたけれど、息子は猫だった。
にゃーにゃー言いながら部屋に入り、にゃーにゃー言いながらコートを着た。
「あのさ、夕焼け見た?」
そう聞いてみたけれど、答えはなかった。
靴下は?
履かないにゃー
手は洗う?
洗わないにゃー
ふたたび外へ出ると、もう夕焼けはいなかった。ただ真っ暗な空があるだけだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?