SSSS.DYNAZENON雑感「現代の平熱vs過去の熱血」

最新話でどうなるか注目のダイナゼノン。最近気になって一気見し始めたが、第一話目からすでにいろいろ仕込んでますよコレは。

冒頭から

川辺でウェイウェイしてる男女の高校生何やら揉めている男女そして誰かが真珠をばら撒く

その真珠が現実?の空に落ちるんだけど、人々はそれに気づいていない。もうここでなにか仕込んでるなって。

そして臭い玉みてえな何かにアップすると

Scarred Soul Shine like Stars

「星のように傷ついた魂の輝き」

これは後々になって意味がわかるという作りなんだろうけど、ああさっきのと繋げて誰にも気づいてもらえない青少年男女の群像劇みたいな感じになるんですかねって感じで臭ってきますわね。

それでバイト先でのくだりがあってからの、学ラン風で包帯ぐるぐる巻のバンカラ男児が出てきてからのタイトル。朝焼けに鳥のさえずりが響くのがなかなかエモ。

ざっくり言えば、あえてボロボロの服(その当時で言えば学ラン)をまとってツッパる感じ。

バンカラ男児が歩く方向

ここで彼は右方向に歩き、次のカットで出てくる男女は左に向いて歩く。

これがいわゆるステージの上手下手を意識しているなら、このバンカラ男児は過去と向き合っているが、男女たちは未来に向かっているっていう対比にもなっていて、このアニメ表紙のすれ違う男女のイメージまんまになっているなってわかる。

意味深なヒロイン

そいで、男女があるく先には水門。そこに座る少女。

ここでの水門は境界線のメタファーなんでしょうね。そいでどうやって昇ったか分かんないけど、一番上に座って歌っている。ここで、この少女の自意識が結構ギリギリのとこにあるんだなというのがわかるのと同時に、この子がメインの話にもなるのかなとか色々考えられるシーンとなっている。

そして件の女子が長い付き合いの友人と会話。忠告を受けつつも、聞く耳を持たないふりしながら二人で自撮り。で、友達もノリノリでピースしてなんだかんだ彼女に甘い。

これはあれっすか、もしかしてエア友?作り上げた友達なのかな?何だか二人の関係から世界が広がらない感じからすごくそう思ってしまう。

そのへんも、最後らへんで明かされるんではないでしょうか。

授業シーンにテーマが隠されている

ほいで、見逃せないのが授業シーンで先生が語るのがストア派とエピクロス派。

なんでここでストア派とエピクロス派の話になるかって言うと、ストア派とエピクロス派が問題にしていたのは運命を受け入れるか抗うかってことで、それはもうこの作品はこの対立を主軸にしますよ宣言してるように聞こえるし、あのすれ違うポスターの主題にも重なってくるように思う。

つまるところ、1話目で結構やるテーマをはっきり言ってくれてるから、多少テンポがゆっくりでもワクワクして見れるなと個人的には思う。

そして、先生のセリフが「このクラスの中」って言って途切れるのは、もうこの話はそういう話しますよ宣言でありつつ、クラスのみんな、大抵の人はそんなことは聞いてねーよ!って感じで自分ツッコミ入ってるとこが切なく感じましたね。

ただ、もうこの先生もとい制作者の宣言を受けてワクワクなんですわ。

そしてオカッパとロリが、学校に行くいかないの話をするんだけど、そこでもやはり、学校に行かないことを自分で決めたあるいは自然とそうなったっていう2軸の話をするんだけど、それって何が違うんだよって問いかけも入る。おそらくそこに答え出してくんでしょうね。

平熱vs熱血

そして主人公くんがバンカラ男児を救う展開。今どき餓死しそうなキャラを助ける展開やるのかって思うんだけども、そのおかげで色々歯車が動き出していく。

それはヨモギやゆめの「今こんなにみんな冷めてんだよ」キャラに対して、こっちは「でもその冷めてる感じにすら冷めてるというか、違うだろ」って思ってるからこそ、ガウマが入ってくると思う。となると、そうやって今風の主人公に過去の人間がガツーンと一発食らわせる展開をやろうとしてるのかなと感じさせる一幕。

そして個々人のギスギスからの家族のギスギス描写。ヨモギの家庭もゆめの家庭も歪なんだよね〜、家族で話もしないのに、お父さんは大家族のテレビ見てる。もう家族とかないべ、形だけ何とか保っとるでって感じですげえ今風だよね。それぞれがそれぞれの箱(役割)から出てこなくなってる。なかなかリアル。

平熱ヒロインvsバンカラ

そいでこのバンカラ男児ことガウマがヨモギとヒロインの二人を繋ぎ合わせるとこが良くて、あの二人は今のままの平熱だと絶対合うことも仲良くなることもなかったんだけど、そこで忘れ去られた過去の熱血系がガツンと昔気質なセリフを吐いて、ヒロインが

「関係なくないですか?」

とATフィールド全開にしながら必死にかわそうしてる中で

「ある!」

と力強く一発。からの

「ヨモギはずっと待ってんだぞ〜!雨降ってんのに風邪引くかも知んないんだぞ〜!」

もはやママ〜、これは懐に入ってくるんだよ、これは中々久しぶりに熱いストレート。

2021年にこれを見せられると逆に何だか新鮮だし、理論武装だらけの今に刺さると思うんだよ。

メタ的な戦闘シーン

そこから何だかんだあってロボットを操縦するわけだが、ここで疑問に思ったのが

「特撮モノの戦闘シーンで流れるテーマ曲ってどこで流れてるんだ?」

街中でも鳴っているのか、それとも視聴者だけに聞こえるものなのか?ふと考えてみてもさすがに街中で鳴ってるとしたら面白すぎるだろと思っていたが

その回答はマジで街中で爆音で流れているというもので爆笑してしまった。その証拠に、ヨモギのコックピットが映る度にテーマ曲が外側から鳴っているようなエフェクトがかかっていた。

となると、この音楽を誰が流しているのか、どうやって鳴らしているのか、その辺のことを考え出すと、これはもしかして最終回あたりですべての幕が下りて、実写でオーイシマサヨシが登場し、ダイナゼノンにエールを送る展開が起きるのではないかと夢想する。

そして、この演出をするということは、制作側が今回このダイナゼノンをかなりメタ的に作ろうという宣言にも見えた。

メタ的演出としての平熱

このダイナゼノンの登場人物はガウマと敵側のオニジャ以外がとにかく平熱なのだ。例を上げれば

・ゆめの「なんとかビーム」
・ロボシーンの掛け声にヨモギの風邪声が入りまくって決まらない
・敵側も終わったらすぐ帰ろうとする「じゃ帰りますー」
・シズム「どこかで怪獣と戦いだけなんじゃないの?」
・前作の「退屈から救いに来たんだ」カットからのまだ救いに来ない
・最新話、ちせのナイトの変身に対する「うわぁもう趣味の世界じゃん」

とくに前作カットの引用からの何も来ないというのは中々意味深。前作で熱く王道展開で救った後の続編で、「実は救えてないんじゃないか?」という懐疑が向けられているような気がする。そして、今回ゆめは自分から謎を追いかけてるのも一つのアンサーなのかなと思う。

あと、とにかく若い人はもう

「ロボとかよくわかんないけど、乗っかからないといけないならしょうがないよね〜」

というどこか醒めてる感じに描いているし、それは作り手側がそういう温度差をヒシヒシ感じているからこそ出てくるセリフで、その刃は自分たちに向けられている訳だからこれは結構辛いのではないかと思ってしまう。

であるからこそ、もう優生側は5千年前から蘇っておいてもうどうしたらいいか分からなくなってるんだろね。もはやこの5千年前からやってきたって、何だか自分たちマニアはもはや5千年前の化石だよねというちょっとした自虐にも見える。

ということを考えると、だからこそ突破口としてのバンカラもとい熱血が今こそ必要ということでガウマが出てくるんではないかと思う。

授業シーンに受容と抵抗の命題が出てくるのもこのテーマが裏にあると考えると絶対必要だよなって合点がいく。

今後の展開

現在の謎解きのスピードから「これもしかして、2クール?」と勘ぐってしまうが、おそらく後5話でキチンと終わるのだろうと信じたい。

展開としては、戦闘シーンから日常パートにおける全てにおいて、メタ的な作りになっていることから、ラストは制作側の特撮好きとしての自分の掘り起こしすなわち、シン・エヴァ的な舞台セットの登場とそこからの開放が行われるのではないかと思う。

ただ、その前にメンバーそれぞれの謎解きがあってその謎が解かれた時に、それぞれがその運命に抗うか受容するか選択するところにスポットが当てられる展開になると思うので、それら諸々を組み合わせてもここから全部のメッセージが詰められるかどうかが今後の見どころだ。

あるいは、そういった過去の掘り下げをしていくうちに、この世界の矛盾に気づいて、自分たちの存在が実は・・・という展開につながってメタ構造が加速するとも考えられるので、個人的には後半も目が離せない。

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