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ショパンのエチュード集に求められること

 このたび、ショパンのエチュード作品10と25の全曲について、演奏上の注意点を弾きながら解説していく音声noteを完結しました。

ショパンのエチュードには、各々の曲で課題となる動きを頭から終わりまでひたすら弾き続けるものが多いのですが、この同じ動きの連続の中で音楽の表情を決して倦怠させてはなりません。メカニックの技術がとてもよくできていても、それだけでは鑑賞に耐えうるものにならないのがショパンのエチュード。多彩な表情と振れ幅の大きな感情、そして微妙かつ細やかな内面…それらの全てがスケールの大きなドラマを伴って聴き手に迫ってくる…こうした世界観を演奏に込めることができるかどうかが、この曲集においての重要なポイントになってくると言えます。

一見単調でワンパターンな動きの連続から様々な形で歌を引き出し、和声感の変化に応じ一音一音の音色を変化させ、ポリフォニックな表現も用いて濃密で多層的な表現を実現したい。また雰囲気を変えたり聴き手に錯覚させたりすることによって、表現の幅や説得力をさらに増していきたい。弾き手の感じたことや考えたことを聴き手に漏らさず伝える方法論を持つか否かで、表現力に大きな差が出ます。この解説は動画ではありませんから、音と言葉に全てを委ねることになります。ですからできるだけ多くの言葉を使い多角的に説明するよう努めました。個人的な感触ですが…結果として動画よりも却って多くのメッセージが込められたように感じています。私の解説から皆さんの想像力が刺激され、より具体的で多彩なイメージが湧いてくることを望んでいます。

「弾ける」の先にそびえ立つ、多彩で劇的な表現世界。その領域に足を踏み入れ、自身の中で咀嚼吸収したものを聴き手に余さず伝えることが、ショパンのエチュードが持つ本来の魅力を示すことに繋がると考えています。

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