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Web3とはなにか - インターネットの変化、実世界の変化から考える(1)インターネットの変化から

Web3の全体像をつかむことは2022年4月現在なかなか難しい状況です。We3についてイベントで話すきっかけがあったこともあり、自分の勉強がてら、Web3をインターネット側からのアプローチ、実世界側からのアプローチとなるべく多面的に理解してみようと試みる文章です。

Web3は偽名が基本ともいわれる世界ですが、この試みではどんな立場でWeb3を語られている文章なのかを知って読むことが重要とも考えているので、書き手の背景と思考にも少し触れたいと思います。

インターネットの変遷からみるWeb3

Web1.0に抱いていた希望

私は40代なかばで20年強、いわゆるWeb1.0の時代からWebにいろいろな形で関わって来ました。多くはクライアントワークの立場ですが、幸いなことにいろいろな立場でいままで何百というPJに携わる機会をもらい、社外ではコミュニティ活動もだいぶやったこともありいろいろな立場でインターネット、Webにかかわる方と交流してきました。いま、ビジネスとしてWeb3関係のことはやっていません。

90年代後半、私がインターネットに興味を持ったのは、インターネットがもたらす未来や社会。俗に言う民主化されていく社会、decentralized(非中央集権)、集合知、参加型社会、個人がエンパワーされていくような世界でした。

99年にクルートレイン宣言が出され、日々インターネットへの期待が高まりワクワクする中、縁あって2000年に学生卒業後に就職もせず起業することになります。

2000年はドットコムバブル終焉が始まった年といわれていますが、まだ社会的にはインターネットがどのようなものになっていくのか良くわからない状況でした(だからこそのバブル)。インターネットがもたらす社会的なインパクトを想像してワクワクしていた人たち、新しい技術にワクワクしていた人たち、少しあとのビジネス的にワクワクしていた人たち。それぞれの希望がありました。私はすべて混じっていましたが、根本的にはインターネットがもたらす新しい社会にワクワクしていたタイプです。

希望からThe Web is Deadまでの10年

そこから10年経った2010年。雑誌WIRED、当時の編集長クリスアンダーソンと編集者マイケル・ウォルフが「The Web is Dead」という文章を書いています。
https://www.wired.com/2010/08/ff-webrip/(英語)
https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20101214/355218/(一部中略があるが日経の日本語文章)

その内容は執筆当時の2010年、それまで開かれていたオープンWebから、Facebookなどのセミクローズドなアプリやプラットフォームに移行し、Webがもたらす変化、世界に興味があったところから、映画や音楽などに興味が戻りつつある(SpotifyやNetflixがちょうど台頭してきていた)といったようなもの。
長い旅も終わり、私たちは家に帰ろうとしているのかもしれない、と。


10年経って僕はいじけていました。

あれ?インターネットがもたらす社会ってもっとオープンで、リアルな世界の不条理を解決できて、民主化、参加型が進むんじゃなかったっけ。なんか社会が想像より変わっていかないぞって思っていました。だって、インターネット「革命」だよ!と。(十分に革命的なところはあったのですが、もっと期待していた)

ただいじけていてもいかんということで、Webの未来はどうなるんだ!?そんなことを真剣に丸一日掛けて考えようという廃校になった小学校を1日借り切って100人規模で考えるという少しぶっ飛んだ「WebSig1日学校」というイベントも2010年から4年やりました。2012年のWebSig1日学校ではこのThe Web is Deadも課題意識として触れ授業内で考えていきました。


Web2.0ってなんだったんだろう?

2010年代のインターネットはやっぱりスマホの普及がめちゃくちゃ大きかったように思います。スマホが普及することによって、本当にインターネットが当たり前になりました。

いつでもどこでも手の中に常時接続の端末を持つことになり、爆発的にネットに使う時間とSNS人口が増え、Web2.0の特長でもいわれるwrite、SNSに投稿する人が激増しました。これが最もWeb2.0のインパクトで大きかったように思います。(Web1.0の特長はread-only,static、Web2.0はread-write,dynamic、Web3はread-write-trust,verifiableといわれる)

もう1つ重要なのはその内容の変化です。インターネットがテキスト中心から写真、動画などに幅が広がりました。Web2になり、積極的にテキストを書くような人だけが発信するWeb1の世界から、写真や位置情報だけでも参加できると世界にハードルが下がりました。

その結果、Web2.0の課題とされるプラットフォーマー強くなりすぎ問題がより強くなっていきます。2020年にはGAFAM5社合計の株式時価総額が東証1部全体を上回るというような状況に。友だちと会話をしているだけなのに、なんでプラットフォーマーにこんなにあらゆる利権が持っていかれるの?など不満が出てくる。

GoogleなどはDon't Be Evilしかり、とてもセンシティブに立場を気にしてきました。それでも、特にヨーロッパ圏では抵抗感も強くGDPRなどに繋がりなかなか苦しい立場にもなっています。Facebookはセミクローズド構造もあり、特にWeb3文脈ではあたりが強い印象です。

Web1.0が希求していた世界にdecentrized、集合知や民主化といったキーワードがありました。Web2.0時代に大量に生まれたログは、企業と個人をフラット化した1つのログの世界を実現しましたが、一方で、ウェブはバカと暇人のもののように可処分時間が多い人の自作自演を含めた発言が目立ってすまう仕組みにもなり、ネガティブな部分も多く出ました。

そうして、爆発的に増えたデータを人は消化しきれず、アルゴリズムを信頼するしかなくなりました。今度は、その結果、アルゴリズムが未成熟なこともありフェイクニュース、フィルターバブルといったように課題が多く出てきます。

テクノロジー的にはこの時期はそのものはあまり話題にあがるものがあまりなかった印象で、content is kingといったようなインバウンドマーケティング/コンテンツマーケティング(これは本質だとは思ってます)だったりまさに元の世界にもどりつつあったように思います。あ、クラウドファンディングはこのタイミングで盛り上がった個人的には希望でした。

2010年代後半になると、ブロックチェーン、AI、暗号通貨、NFT、メタバース、XRなどテクノロジーで少し大粒なキーワードが注目されるようになってきました。

Web3の出現背景とブームになる理由

このような背景でWeb2まで流れとWeb3の出現は「説明」はできそうです。では、なぜ今ブームになるのでしょうか?

ブームの構造を考え見ると、「価値観変化」「テクノロジー」「アート」の変化タイミングがあったときに起きるように思います。

それぞれはそれぞれの変化として語られており、価値観変化はポスト資本主義、テクノロジーはブロックチェーン、AI、XR、NFTなどなど、アートはメディアアート、デジタルアート、クリエーターエコノミーとそれぞれで一定切り離された会話がなされてきたと思います。

それが2021年末あたりに「Web3」という言葉で価値観、テクノロジー、アートをすべてつなげた1つの言葉として語られたことがブームになった。その一方で、複数の変化を1つとしたことによるわかりにくさにつながったように思います。

加えて、暗号通貨からの流れでお金がついて回ってきていたこともブームになった大きな理由の1つです。今はさらにVC(ベンチャーキャピタル)のお金が入ることでよりビジネス的に一気に注目を浴びたという状況だと考えています。

コムギさんによるWeb3概要

自分なりにWeb3全体像を考えてみようときっかけになったイベントです。Smallx camp MOYAIAシリーズ第8回「最近よく聞くWeb3って何?」でWeb3 Researcherコムギさんとお話しさせてもらいました。

雑誌『WIRED』日本版VOL.44「Web3、あるいは所有と信頼のゆくえ」巻頭に掲載されたインフォグラフィックスを利用して解説していただいています。Web3概要をショートに見たい方はぜひどうぞ(9分30秒から40分ほどまで。その後は質疑含めたWeb3談義です)

次は、リアル世界からのアプローチに行く前に、Web3が語られる切り口、言及のポイントをいろいろなポジション別に考えてみたいと思います。


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